車のクラッチオーバーホールのやり方を解説。注意するポイントを説明

整備士

乗用車では今はほとんどの車がA/Tなので、そもそもクラッチが無いですが、トラックやバスではまだまだクラッチ(マニュアル車)の車が大半です。

そこで、クラッチオーバーホールをする方法を解説します。

簡単に、私の経歴です。

『クラッチオーバーホールのやり方』

クラッチのオーバーホールのやり方は、思っているより簡単です。

とはいえ、初心者や経験が無い整備士にとっては難しいと思う作業になってしまいます。

①プロペラシャフト

まずは、トランスミッションとディファレンシャルの間に付いているプロペラシャフトを取り外します。

型式によって、その重さは様々あります。

大型車のプロペラシャフトを初めて持った時は、重すぎて持てませんでしたね。今は持てますが、新人の頃は持つのがやっとでした。

だいたい、作業が遅い・作業に時間が掛かっている人はこのプロペラシャフトを取り外すのに非常に手こずっている事が大半です。

外れない物は本当になかなか外れてくれませんが、コツさえつかめば、そこまで苦労する事は無いかと思います。

タガネとハンマーを使用する事によって、取り外しやすくなります。ハンマーは普通のハンマーよりデカい物が良いかと思います。

②クラッチブースター

クラッチペダルから発生した油圧がかかります。

エアーとオイルのパイプがホースが接続されているので、エアーのみ取り外しましょう。

別に、オイルのパイプを取り外しても良いですが、エア抜きをしないとダメになるのでそのぶん、作業が遅くなります。

③ワイヤー

シフトワイヤーとセレクトワイヤーを取り外します。

これは、無いタイプの物の有ります。

マニュアルミッションでは有りますが、オートのミッション車ではこれは付いていません。

④各配線・コネクター

T/Mに取り付いているセンサーのコネクターを取り外します。

ニュートラルスイッチやバックスイッチなど。

昔の車は3個程度しか外さなくても良かったですが、最近の車はオートトランスミッション車が増えた事もあって、その分配線・コネクターを取り外す数が増えたました。10個程度の配線・コネクターを取り外さなくてはダメです。

⑤T/Mの取付

①~④の工程が完了するといよいよT/Mを降ろす作業に入ります。

まずは、ミッションジャッキをセットします。

これが、実は一番重要です。

T/Mに対して平行になるように、ミッションジャッキをセットする

これを怠ると、作業自体のスピードも遅くなり、また適当にセットすると落下する危険もありますので、ここは確実にセットするように心がけましょう。

ミッションジャッキをセットし終われば、取り付けを緩めて降ろします。

全て、緩めても落ちる事は有りません。

上の方に隙間が出来ると思います。その状態からミッションジャッキを上げていき、上下の隙間が同じなるようにします。

同じになったら、後は引っ張ってエンジンとT/Mを切り離します。

⑥クラッチ関連部品

T/Mが降りたら、クラッチカバー・ディスクが見えて来ます。

クラッチカバー・ディスクを取り外します。

ここで点検する項目は2つあります。フライホイールとオイル漏れの確認です。

<フライホイール>

エンジンのクランクシャフトに取り付けられていて、エンジンと同じ回転をしています。

フライホイールの当たり面の点検行います。

フライホイールの当たり面はクラッチディスクが当たる個所になります。

ここが、段付き摩耗や亀裂が入っているとクラッチを繋いだ時に上手い事動力が伝わりません。

段付き摩耗や亀裂が入っている場合は、研磨をするか交換するかしましょう。

オイル漏れ

フライホイールを取り外したら、クランクリヤシールよりオイル漏れがしていないかと確認しましょう。

この部品はオイル漏れを起こす確率が高い部品になっていますので、オイル漏れがなくても、交換を勧めています。

フライホールを外さないと交換出来ませんから、外したついてに交換しても良いと思います。

⑦クラッチカバー・ディスクの交換

クラッチディスクは交換のみです。

クラッチカバーの場合は、ASSY交換する場合と研磨する場合が有ります。

フライホイールとクラッチカバーの間にクラッチディスクが挟まって取り付いています。

クラッチカバーのプレッシャープレートの摩耗と亀裂を点検します。

フライホイール同様に、研磨をする事も可能ですが最近はほとんどASSY交換を行っています。

その理由は、研磨をする場合と新品に交換する場合での料金を比較しると1~2万円程度しか変わらないからです。

少しでも安く修理費を抑えたいのなら研磨でも可能ですが、時間もかかってしまうので、基本的にはASSY交換になると思います。

⑧取り付け作業

①~⑦が分解作業になります。取り付け作業は逆の手順で行っていきます。

その中で、クラッチディスクのセンターをしっかりと出す事です。

これがずれてしまうと、いくら頑張ってもT/Mが車両に載せれません。

しっかりとセンターを出さないと、T/Mのインプットシャフトが入らないからです。

しっかりとセンターが出たら、後はT/Mを載せて行って周辺部品を付けて行って、作業の完了となります。

⑨クラッチオーバーホール後

クラッチオーバーホールを行った後には、クラッチの遊びの調整を行わなければなりません。

過去の投稿を参照して下さい。

『クラッチディスクは定期的に交換が必要』

クラッチオーバーホールとはクラッチディスクを交換する事です。

クラッチディスクとはクラッチカバーとフライホイールの間に挟まっているディスクになります。

高速で回転しているT/Mのギヤを止めて、ギヤを変則しやすくする為の部品です。

どんなに運転の上手な人が乗っていても必ず、交換が必要になる部品になります。

高速で回転している物を止めるのですから、どんどんクラッチディスクの表面が摩耗していきます。

限度を超えてしまうと、クラッチが切れなくなって走れなくなります。残量の確認方法は過去投稿を参照して下さい。

なので、限度に来る前に交換するのが一番良いです。

しかし、なかなか限度に達する直前で交換する事が困難なので、ついつい限界まで乗ってしまって走れなくなって、レッカーになります。

『クラッチの構成部品』

クラッチ関係の主な構成部品名と役割です。

名称役割
クラッチカバーフライホイールと同期して回転している。
間に挟まっているディスクに動力を伝える。
クラッチディスクフライホイールとクラッチカバーの間に有ります。
エンジンのトルクをトランスミッションに伝える働き。
フライホイールエンジンのクランクシャフトに取り付けられている。
クラッチディスクが常に当たっている。
スラストベアリングクラッチペダルを踏んでブースターが動く事によって
スラストベアリングがクラッチカバーのツメに当たり
押す事によって、クラッチディスクを止める
パイロットベアリングフライホイールの中心に取り付けられていて
インプットシャフトのセンターが出る様になっている。

『エンジンの動力の伝わり方』

クラッチペダルを踏んでいない状態

クラッチペダルを踏んでいないとエンジンの動力は「接続」されています。

フライホイールがエンジンの力によって一緒に回り、それと同期しているクラッチカバーが一緒に回り、間に挟まっているクラッチディスクがトランスミッションに動力を伝える。

これが、普段の動力の伝わり方です。

クラッチペダルを踏んだ状態

クラッチペダルを踏む事によって、エンジンの動力は「遮断」されます。

フライホールがエンジンの力によって一緒に回り、それと同期しているクラッチカバーが一緒に回るまでは一緒ですが、次が違います。

クラッチペダルを踏むことによって、クラッチカバーのツメが押される事によって、クラッチディスクとの接続が遮断されます。

エンジンの動力はクラッチカバーまでしか伝わらなくなり、クラッチディスクから後には動力伝達はしません。

それによって、トランスミッションが止まり、ギヤがスムーズに変則出来る様になります。

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