【トラック整備士】いつもより力が無い・パワー不足を感じたら。考えられる故障個所は?

整備士

いつも乗っている車・トラックで、アクセルを踏んでもいつもの比べたら、なにか力が無いと感じた事はありませんか?

私は、15年以上トラックの整備士をしていますが、この手の不具合は非常に多いです。緊急性があるものから、まだ初期段階のものまで、多種多様な不具合があります。

その原因を解説します。

まず大きく分けて、3つの原因が考えられます。

  • 吸気・排気系
  • 燃料系
  • 機械・電子系

一つ一つ詳しく解説していきたいと思います。

《吸気・排気系》

まず、一番多い不具合がこれですね。

車の空気の流れ軽く解説します。

   が吸気系、   が排気系になります。

順番名称おおまかな役割
1⃣エアクリーナー大気中のゴミを取り除く
2⃣ターボチャージャー
(ターボ付き)
空気を加給する
3⃣インタークーラー
(ターボ付き)
加給された空気を冷やす
4⃣インテークシャッター空気の流れを制御する
5⃣エンジンで燃焼4工程(吸気・圧縮・爆発・排気)
6⃣ターボチャージャー
(ターボ付き)
排気ガスによって、高速で回る
7⃣排気ブレーキ排気ガスを止める事によってブレーキをかける
8⃣排気バス浄化装置排気ガスをキレイにする装置

1⃣エアクリーナー

大気中の空気を吸う事によって、エンジンに必要な空気を取り込みます。

しかし、大気中には砂や埃といった細かいゴミが滞留しています。

その細かいゴミをエアクリーナーによって取り除いて、キレイな空気をエンジンに取り込みます

このエアクリーナーが詰まると、空気が吸えなくなるので、エンジンに必要な空気の量が少なる事によって、出力不足に陥ります。

エアクリーナーは定期的に交換するか、清掃するかですが、乾式・湿式があって乾式は清掃可能ですが、湿式は清掃不可です。

取り付いている所に、書いていると思うので、自分の車にあった交換・清掃方法を行いましょう。

2⃣・6⃣ターボチャージャー

ターボ付き車の場合はエアクリーナーとホースによって、繋がれています。

ターボはインテーク側とエキゾースト側に分かれています。

ターボが排気ガスによって高速で回される事によって、エアクリーナーから吸い込んだ空気を加給してエンジンに送ります

エンジンECUによって最適なターボの羽の角度を決めています。

しかし、なんらかの原因によってその最適な角度にならなければ、出力が低下し、最悪の場合はエンジンチェックランプが点灯します。

一度、故障すると交換するしか直せません。

運が良かったら、廃車にするまで交換する事は無いと思いますが、当たり外れがあります。

3⃣インタークーラー

ターボから加給された高温の空気を冷やす事によって、エンジンの燃焼効率を高める役割。

ターボから加給された空気は、高温の為にそのままエンジンに送られると燃費の悪化や出力不足になります。

インタークーラーは効率よく冷やすために、ラジエーターの前や車の一番前の風が良く当たる所に設置されている事が多いと思います。

インタークーラーに石等によって、傷が出来てそこから加給された空気が漏れたりします。

本来、エンジンに送られる空気が漏れる事によって、出力不足になります。

インタークーラーにオイルが滲んだ後があったら、漏れている可能性が高いですね。

4⃣インテークシャッター

燃焼室に入る、インタークーラーによって冷やされ、加給された空気の量を調整しているシャッターになります。

エンジンに入る最適な空気の量を調整する事によって、エンジンの出力を保っています。

閉じたままや、開いたまま、シャッターのガタ等によって空気の量が適正にならない為に、爆発がスムーズにいかず出力不足に陥ります。

5⃣エンジン内部

エンジンの4工程「吸入→圧縮→爆発→排気→」のどれか一つでも正常な働きをしていなければ、エンジンは不調になって、パワー不足になります。

4工程説明
吸入空気を燃焼室に取り込む
圧縮取り込んだ空気を圧縮する
爆発燃料が着火、引火する事によって爆発する
排気燃えた空気を排出する

ここが、壊れてしまうとエンジンのオーバーホールをしなければいけません。

7⃣排気ブレーキ

普段は開いたままになっていますが、アクセルペダルを離した時に、閉じて排気ガスの通路を塞ぐ事によって、エンジンにブレーキをかける役割があります

雨等によってシリンダーに錆が発生し、排気ブレーキの動きが悪くなると、常に排気ガスの通路を塞いでいる事になります。

いくらアクセルを踏んでも、排気ガスが抜けないとエンジンの出力は上がりません。

半分以上閉じたままになると、出力不足になります。

8⃣排気バス浄化装置

排気ガス中に含まれる有害なガスをフィルターによって取り除いて、大気中に開放しないようにする働きがあります

排気ガス浄化装置の説明は過去の投稿を参照して下さい。

そのフィルターが詰まる事によって、排気ガスの流れが悪くなります。

その状態は、排気ブレーキが効いている状態と同じになるので、排気ガスの流れが悪くなり、結果、出力不足になります。

その他

各装置を繋いでいる、パイプやホースの亀裂・損傷によっても出力不足になります。

亀裂・損傷個所より加給された空気が出て行ってしまうので、必要な空気が供給されない事によって、良い燃焼が行えず、力が出ません。

実は、ホースの損傷という不具合が実際の診断では一番、多いかもしれませんね。

吸気系・排気系のトラブルは燃費の悪化、出力不足に一番に直結するので、しっかりと診断しましょう。

《燃料系》

次に解説するのは燃料系になります。このトラブルの比較的多い原因になります。

燃料の簡単な流れです。

順番名称役割
1⃣燃料タンク燃料を貯める
2⃣ストレーナー大きなゴミの除去
3⃣燃料フィルター小さいゴミの除去
4⃣燃料ポンプ燃料を圧送する
5⃣コモンレール高圧の燃料を貯める
6⃣インジェクター高圧の燃料を噴霧する

1⃣燃料タンク

燃料タンクが原因で出力不足になる事もあります。

その原因は、燃料タンクは燃料ポンプによって燃料が吸われます。なので、タンク内が負圧になります。

その負圧を大気圧に戻すように、チェックバルブや燃料タンクのキャップが付いています。

しかし、その働きが出来なくなると、タンク内が高負圧になり、燃料が吸えなくなり燃料が足りない状態になり、出力が低下します。

後は、燃料を吸い出すパイプが付いているのですが、そのパイプに亀裂が入っているとそこから空気を吸ってしまって、エアが噛む事によって、出力不足になります。

2⃣ストレーナー

燃料タンクから吸い出される際に通るフィルターです。

燃料タンクが錆びやゴミ等によって、不純物が多量に混入していると詰まってしまいます。

ストレーナーとはフィルターよりも網目が粗いフィルターですので、多量に不純物が付着する事によって、燃料が吸えなくなります。

ストレーナーは清掃可能ですので、清掃してみましょう。

3⃣燃料フィルター

燃料フィルターの説明は、過去の投稿を参照して下さい。

ストレーナーよりも網目が細かい分、定期的に交換しないと燃料が吸えなくなります。

燃料が足りなくて、出力不足になります。

4⃣燃料ポンプ

燃料を吸い込んで、高圧にして、エンジンに送る装置になります。

燃料が圧送出来なくなったり、燃料漏れを起こしたりする事によって、出力が低下します。

燃料ポンプの場合は、エンジンチェックランプが点灯する事が多いので、不具合としては発見しやすいかと思います。

ただ、ポンプの不具合の場合はエンジンが停止してしまって、再始動出来なくなる可能性が高いです。

5⃣コモンレール

燃料から圧送された高圧の燃料を溜める物になります。

良く有る故障は、最高圧力になれば、それ以上圧力が上がらない様にするプレッシャーリミッターという部品が付いていますが、それが故障する事によって、最高圧力にならなくても、圧力を逃がしてしまい燃料圧力が上がらなくなる現象です。

これも、チェックランプが点灯する現象なので故障自体は早く見つける事が出来ると思います。

6⃣インジェクター

高圧の燃料を燃焼室内に噴霧する装置になります。

しかし、何十万回か噴霧するとインジェクターの先が摩耗し正常に噴霧出来なくなる事によって、燃焼が悪くなり、良い爆発が出来なくなり、燃費も悪化し、出力も低下する原因になります。

インジェクターは個体差が大きく、交換しなくて良い車は一生交換するは無いでしょう。

燃料エレメントを定期的に交換する事によって、燃料内の不純物が取り除かれるので、その分長持ちします。

《機械・電子系》

最後は、機械・電子系のトラブルによって出力不足になる現象です。

この不具合は、吸気・排気系や燃料系を交換したが、それでも直らなかった場合に考えます。

様は、そこまで頻繁に起こる不具合では無いという事です。

色々、交換したがそれでも直らなかったから、エンジンのコンピューターを交換したら、直ったとか、配線を調べてみると、切れていたとかetc.。

この不具合は、予期せぬ所が故障している事も多いので、閃かないとなかなかたどり着けない事もあります。。

正直、吸気・排気系・燃料系で直らないと、覚悟して診断しないとなかなか見つける事が出来ないと思います。

そういう時は、一度初心にかえって、見直す事によって、不具合箇所を見つける事が出来たりしますので、焦らずにじっくししっかりと診断していきましょう。

《まとめ》

車の出力不足は、自家用ではそこまで心配する事は無いですが、運送や送迎には大きく影響します。

自分で簡単に直せる事もありますので、日々の点検を確実に行う事によって、出力不足になる可能性を低くできます。

しかし、部品が壊れる事もあるかと思いますので、違和感を感じたら、修理工場へ持ち込み、点検してもらいましょう。

早めに対処する事、部品代も修理費も最小限で済むと思います。

荷物を積んでいる時や、お客様を乗せている時に発生すると業務に支障をきたす恐れがありますからね

私達、整備士よりも普段その車を運転しているドライバーの方がその車に関しては詳しいと思いますので、違和感を感じたら無理に使用せずに、しっかりと直してもらってから使いましょう。

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