結論、仕組みを分かっていれば、調整は可能です。
が、間違ったやり方をしてしまうと、早期クラッチディスクの摩耗やギヤの変則不良に繋がりますので、注意が必要です。
私の経歴です。
今の時代、トラックでもオートマチック車が増えて来ましたし、クラッチの自動調整機能が付いたミッション車も多くなりましたが、まだまだミッション車は多数有ります。
1.クラッチの遊びとは?
クラッチの遊びとは、クラッチペダルを踏んでからギヤが繋がるまでの間の事を言います。属に言う「半クラッチ」の事です。
ミッション車を乗った事のある人だったら、分かると思いますが、クラッチペダルを一杯踏んでから、ギヤをシフトして、半クラッチになるまで、ペダルを離していくと思います。この半クラッチまでの事を「クラッチの遊び」と言います。
この遊びが適正じゃないと、クラッチディスクの早期摩耗や変則不良に繋がります。
・クラッチの遊びは定期的に調整が必要
クラッチの遊びは、使用していくと、変化していくので、定期的に調整が必要になってきます。
特に、調整時期の基準は有りませんが、前に比べて半クラッチの位置が高くなったり、低くなったりしたら、調整の時期だと考えて下さい。
・クラッチの遊びは何故、変化するのか
簡単に言うと、クラッチディスクが減っていくからです。クラッチディスクが減った分だけ、クラッチの遊びが変化します。
それを調整し、また減ってきた調整する。これを繰り返して、限度値に来たら、クラッチディスクを交換します。
・そのドライバーの好みに調整可能ですが・・・・。
乗っているドライバーの好みで、遊びが極端に少なかったり、多かったりします。
クラッチペダルを少しでも浮かすと、半クラッチの状態になるように調整しているドライバーが結構します。
これは、遊びが極端に少ない状態です。あまりお勧めは出来ませんが、ギヤを繋ぎやすいですね。
この状態だと、クラッチディスクの残量が正確に分からないという欠点はあります。
ドライバーの好みもあるとは思いますが、適正なクラッチの遊びが一番、クラッチディスクの摩耗具合も少ないと思いますので、出来る限り適正な遊びに調整しましょう。
2.クラッチの遊びを調整出来る車
全てもミッション車がクラッチの遊びを調整出来るわけではありません。
中型〜大型車は、だいたい調整出来ると思いますが、小型車は少し構造が違うので、遊びの調整は出来ません。
ミッション車でも自動調整の車は基本、遊びの調整は出来ません。
ミッション車で調整は出来るタイプの簡単な見分け方は、トランスミッションの横に付いているクラッチブースターにスプリングが付いているかです。
付いていれば調整可能、もし付いていなければ自動調整か調整不可となります。
3.クラッチの遊びの調整方法
まずは、クラッチ操作をすると、どうなるのか解説します。
- クラッチペダルを踏む
- クラッチマスターシリンダーが動く
- クラッチ配管に圧力が掛かる
- その圧力がクラッチブースターに伝わる
- クラッチブースターのピストンが動く
- クラッチブースターの先のクラッチリリースシャフトが動く
- クラッチディスクが切れる
- ギヤ操作が可能になる
- ギヤをシフトする
これが一連の流れです。
クラッチの遊びは⑥のクラッチブースターとリリースシャフトとの遊びの事を指します。
なので、クラッチの遊びの調整はクラッチブースターのロッドの長さを調整し、クラッチリリースシャフトとの隙間を適正にするという事です。
写真のような物がクラッチブースターになります。
クラッチブースターから出ているロッドを調整していきます。
では、実際の調整方法を紹介していきます。
・遊びの基準
車種・ミッションの型式によって若干異なりますが、ロッドとリリースシャフトの隙間を無くしていきます。
この時、スプリングを取り外すと楽に調整出来ますが、別に取り外さなくても調整可能です。
隙間を無くすまで、ロッドを伸ばしてから、ロッドを縮める方向へ2回転半ぐらい戻すと、正常な隙間になります。
ここは感覚的な所も有りますので、一概には言えませんが・・・。
・調整方法
各部の名称です。写真にて紹介します。
名前 | 役割 | |
① | クラッチブースター | クラッチペダルから発生した油圧と圧縮空気によって作動する |
② | リターンスプリング | プッシュロッドを元の位置に戻す役割 |
③ | プッシュロッド | クラッチブースター内ピストンによって押され、リリースシャフトを動かす |
④ | ロックナット | プッシュロッドをロックする |
⑤ | リリースシャフト | プッシュロッドで押される事によって、クラッチディスクを切る |
では、調整方法を紹介します。
順番 | |
1⃣ | ④を緩める |
2⃣ | ③を伸ばしていき、⑤との隙間を0にする |
3⃣ | 2⃣の状態から③を縮める方向へ2回転半回す |
4⃣ | 隙間が出来て③が⑤側に少し動く事を確認する |
5⃣ | 一度、エンジンを始動しクラッチペダルを踏んて確認する |
6⃣ | ギヤを繋いでいき、半クラッチの位置を確認する |
7⃣ | OKなら④を締めて完了。 (ダメだったら、③の長さを再調整し良い所に合わす) |
少しでも、整備をかじった事のあるドライバーなら簡単に出来るとは思います。
自信が無い人は、修理工場へ持ち込んだ方が確実で安心です。
・クラッチ残量
クラッチの遊びを適正に調整する事によって、おおよそのクラッチ残量の下限値が分かります。
見る所はプッシュロッドのネジ山がある部分の長さです。
その長さが、○○cm以下になるとクラッチ残量が無い状態だと分かります。
この○○は、車種・ミッションの型式によって、長さは異なります。
4.クラッチ調整後
クラッチ調整後は、半クラッチの位置を確認する。
少しでも違和感を感じたら、再調整をする事をお勧めします。
ES(坂道発進補助装置)の初期設定が必要です。普段、使用していなければ別に問題無いのですが、クラッチの遊びの調整を行うと、必ずこれをやらないと、ESが正常に作動してくれません。
このESの調整は大半は修理工場に持ち込まないと出来ません。特殊工具を使用しなくても調整出来るタイプの車も有ります。
5.まとめ
クラッチの遊びの調整は自信がある人はやって、そうでない人は安易に手を出さない方が良いでしょう。
クラッチの遊びを適正に保つ事がクラッチディスクの寿命を長くする秘訣とも言えますので、定期的な調整が必要です。
クラッチが切れなくなると、走行が出来なくなりますので少しでも違和感を感じたら、修理工場へ持ち込み点検してもらいましょう。
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