トラックやバスのエア漏れについて、その原因と点検方法を紹介していきます。

整備士

トラックやバスで頻繁に発生する「エア漏れ」について。

私は、15年以上トラック・バスといった大型車をメインに整備をしているエンジニアです。その中で、多い修理内容がエア漏れになります。私自身、色々なエア漏れ修理をしてきた経験があります。

ここでは、何故エア漏れをするのか・どういった故障なのか・どうすれば良いのかを解説していきます。

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【乗用車と大型車の違い】

そもそも、一般の人はまず「エア」って何?と思うでしょう。私も最初、何も知らない状態で、自動車業界に入って初めて知りました。大きく分けて、バキューム式とエア式があります。

・バキューム式

バキューム(負圧)を使って、力を倍増させて、小さな力で大きな力を得られます。

なので、お年寄りから女の人まで誰が運転しても、同じように力が車に伝わります。ブレーキや各部品の作動されるのに使用される装置となっています。

主に、乗用車、小型のトラック・バスがこの装置を使用して、車の操作をスムーズに行えるようにしています。

・エア式

エア(圧縮空気)を使って、小さな力で大きな力を得られるようにした装置です。

バキューム式よりももっと大きな力が得られますので、中型車以上のトラック・バスがこの装置を使用しています。

誰が乗ってもしっかりと車の運転(走る・止まる・曲がる)が出来るように、バキューム式よりもより強い力が得られるエア式が使われています。

大型車がスピードを出して走行し、止まる為にブレーキを踏んだ時に、大きな力じゃなければ、何トンもある様な鉄の塊を止める事は出来ませんよね。なので、バキューム式ではなく、強い力が得られるエア式が大型車に使用されています。

【何故漏れるのか?】

エアは車に搭載されたコンプレッサーという部品によって空気を圧縮し、各装置に送っています。

圧縮された空気なので、圧力が常にかかった状態になっています。エアタンク・パイプ・ホース・バルブ等が全て繋がった状態です。

その為、少しでも弱い部分があるとそこから圧が逃げていきます。これが「エア漏れ」です。

一番の漏れる原因はメンテナンスの不良による部品の劣化です。圧縮空気中にはオイル・水が混入していますので、普通に使用していても各部品は劣化していきます。なので、定期的なメンテナンス・交換が必要になってきます。これを怠ることによって部品の劣化を早めてしまって、エア漏れにつながります。

後は経年劣化と部品の不具合によって、漏れが発生します。新車でも漏れている車がありますね。

長い間、使用していない場合でも正常でも少しずつ漏れていく場合もあります。

【エア圧の正常な状態】

まずは、正常な車の状態を説明します。

トラック・バスに乗った事のある人は分かると思いますが、メーター内、フロント用・リヤ用それぞれのエアゲージが付いています。

正常だと8~10Kgf/㎠に設定されていると思います。町中を走っているトラックやバスから「パシュ」といった空気が排出される音を聞いた事があると思いますが、8~10Kgf/㎠になるとエアドライヤーという部品から排出されるエアで「パージ」と言います。

正常な状態から5Kgf/㎠前後になると、メーターに警告表示と警告音が鳴って、ドライバーに警告します。5Kgf/㎠以下になると、正常な運転操作が出来なくなる可能性があるので、重大事故に繋がる前にドライバーに知らせる為です。これは、法令点検(3ヶ月点検・車検整備)でも点検する項目です。

【点検手順】

エア漏れをしている車は、1日経って次の日に乗った時に、メーターに警告が出ます。それによってどのように点検していくのかが変わりますので、まずはしっかりと今の車の状態を確認する必要があります。

この確認を確実に行う事によって、エア漏れをしている箇所を早く見つける事が出来ます。

1⃣.メーター内のエアゲージの値

まずはエンジンをかける前に、キーをONにします。するとメーター内のエアゲージの値を読むことが出来ますので、今のエアゲージがフロント・リヤがどうなっているのかをしっかりと確認しましょう。

車はフロント側とリヤ側でエアタンクが分かれていますので、どちらか片方もしくはどちら共に5Kgf/㎠以下になっているのかを確認しましょう。

車は安全のために、エアの系統がいくつも分かれています。5Kgf/㎠が一つの目安になっています。車を走行させるのに必要な重要な装置が漏れは、5Kgf/㎠以下になります。逆に、車を動かすのに必要ない装置の場合は5Kgf/㎠まででとまります。

<5Kgf/㎠で止まっているのか5Kgf/㎠以下になっているのか>

見るポイントはこれですね。これによって、点検する個所が全然違ってきます。

・5Kgf/㎠以下の場合

5Kgf/㎠以下の場合は、ブレーキ系統かエアタンク系統に漏れが発生しています。

例)ブレーキバルブ・リレーバルブ・エアタンク・ドレンコック

・5Kgf/㎠以上の場合

5Kgf/㎠以上の場合は、補器系統にエア漏れが発生しています。

例)エアサスベローズ・スイングドア(バスの場合)

2⃣.パージするのかを確認

1⃣でエア圧がどれくらいになっているのかを確認した後は、一度エンジンを始動させてパージ・エア圧を正常値まで貯めてみて下さい。

エア圧が貯まってきてきるのにパージしなければエアドライヤーの不良、パージはしたけど基準値の値より低い場合や高い場合はパージ圧の調整を行ってください。

エア圧は高くても低くても車にとってはよくないので、きちんと基準値になるように調整しましょう。

3⃣.どの程度の漏れ具合なのかを点検

次にエア圧を貯めてからエンジンを停止させて、1時間程度そのまま放置します。

1時間後にメーター内のエアゲージがどれだけ下がっているのかを確認する事によって、漏れの程度が分かります。

1Kgf/㎠以上減っていれば、漏れ具合としては酷いのできちんと漏れ箇所を特定し修理が必要になってきます。逆に1時間しても1Kgf/㎠も減っていないと、エア漏れ個所を見つけるのは少し難しくなりますね。本当に少しの漏れの場合はなかなか見つける事は出来ない場合もあります。酷い漏れになるまで、そのまま使用して貰う事もあります。

4⃣.エア漏れ箇所の点検

1⃣~3⃣を踏まえた上で、エア漏れの点検をしていきます。石鹸水や専用のガス漏れ検知剤によって、見つけていきます。私の会社ではこれを使用しています

漏れが激しい箇所だと、音だけで分かります。

各部品に泡をかけていき、点検していきます。泡がプクプク出て来る所が漏れ箇所です。微量の漏れの場合は、一度泡をかけてしばらくしてから再度、見てみると、カニが泡を吹いたみたいになっている所があります。

漏れ箇所が見つかったら、そこを修理して再度点検します。エア漏れのやっかいな所は、漏れ箇所を直すと、次に弱い箇所が漏れて来る事です。そうやって、何度も修理して、漏れを直していきます。夜に、パージさせて、次の日の朝に同じエア圧だったら、修理完了です。

【まとめ】

  • エア漏れはの点検はまずは「5Kgf/㎠より下がるのか、5Kgf/㎠で止まるのか」
  • 正常なエア圧なのか。
  • パージはするのか。
  • どの程度の漏れ具合なのか
  • 一度、漏れ箇所を修理したら再確認

上記の事をしっかりと頭に入れてから、エア漏れの点検・修理を行いましょう。

ただ単に全ての部品のエア漏れをすれば、時間がかかります。しっかりと、今の車の状況を確認すればある程度漏れている可能性のある部品の検討は付くと思います。

本当に微量の漏れの場合は、非常に難しいとは思います。一つずつエアの系統を遮断していかないと分からない場合もあります。

エアは車を動かすのに重要なものになっているので、しっかりと修理し安全に車を運行出来るようにしっかりと修理をおこないましょう。

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