今まで普通にエンジンが掛かっていたのに、突然車のエンジンが掛からなくなる事があります。
前兆がある場合と全く無い場合があったりします。自分で対処出来る場合もありますので、その方法を紹介します。
私自身、整備士を15年以上経験してきて、実際に数十件のエンジン始動不良を直してきました。その経験から色々と解説していきたいと思います。
まず最初に「クランキングしない」のか、「クランキングする」のか、です。
※クランキングとは、エンジンを掛けようと「キー」を回した時に、エンジンが回っている状態の事を言います。
【クランキングしない】
«バッテリー上がり»
まず一番多い故障がこれになると思います。
キーシリンダーを回して、「カチカチカチ」と音が鳴っていると、ほぼ間違いなく、バッテリー上がりを起こしています。メーターの照明が暗くなっていれば、100%です。
これは、前兆があっていきなりなる場合もありますが、徐々にバッテリーが弱っていってダメになるパターンの方が多いと思います。
エンジンのクランキングの時間が長くなったと感じたら、バッテリーが弱ってきているサインになりますので、バッテリーが完全に上がってしまう前に交換する事によって、出先や突然のバッテリー上がりの予防出来ます。
この場合は、バッテリーを交換するか、ジャンピングスタートをするかです。
※ジャンピングスタートとは、正常な車のバッテリーから電気をもらって、ケーブルを繋いでエンジンを掛ける事です。
家の駐車場や出先のパーキングで起こった場合の対処方法↓
- バッテリーを購入して、自分で交換する
- 修理業者に依頼して、バッテリーを交換してもらう
- 知り合い・通りすがりの車にジャンピングスタートされてもらう
<バッテリー交換>
バッテリー交換ぐらいだと、整備の経験が無くても、素人でも交換が可能です。
が、注意しなければならない事が2つ有ります。
1つ目は、バッテリーの+と-を間違わない事。普通にバッテリーに書いているので、間違わないと思いますが。+側は赤色のゴム製のカバーが付いていて、-側は黒色のゴム製のカバーが付いています。
2つ目は、バッテリー上がりを起こした原因を見つける事です。例えば、ルームランプと付けたままとか、後付けの機器が常にONしている状態だったとか、後は単純にバッテリーの寿命だったりとか、です。
原因を見つけないとまた、バッテリー上がりを起こしてしまう可能性が有ります。見つからなかったら、オルタネーターの不良の可能性があります。オルタネーターが不良の場合は、またバッテリー上がりを起こしてしまう可能性が有るので、注意が必要です。
<ジャンピングスタート>
ジャンピングスタートするには、ケーブルが必要です。普通にどこでも売っているので、購入して下さい。
価格:3,980円 |
- 故障車・救援車のボンネットを開ける
- 故障車のバッテリープラスにケーブルを繋げる
- 繋げたケーブルを救援車のバッテリープラスに繋げる
- 救援車のバッテリーマイナスにケーブルを繋げる
- 故障車のバッテリーのマイナスでは無く、エンジンの金属部に繋げる(どこに繋げたら良いのか分からないは、バッテリーのマイナスに繋げても良い)
- 救援車のエンジンを掛ける
- 故障車のエンジンを掛ける
- エンジンが掛かったら、逆の手順でケーブルを外していく
- 完了
«スターターの故障»
キーシリンダーを回しても、何も反応しない場合や「キュイーン」と音が鳴っているだけや「ガチャ」と一度しか鳴らない場合は、スターターの不良の可能性があります。
メーター内やヘッドライトが点灯しているのに関わらず、キーを回してもクランキングしなければ、スターターの故障の可能性が高いです。
その場合、スターターの交換が必要です。過去の投稿でスターターの点検方法を紹介していますので、参考にして下さい。「スターターの点検方法」
何も反応が無い場合や「ガチャ」としか音が鳴らなかった場合は応急修理が可能です。スターターの取り付け位置が分かる人だったら、一度スターターを叩いてみて下さい。これで、スターターの接点が復活すれば、動く時が有ります。試してみて下さい。
「キュイーン」と鳴っている場合は厳しいと思いますが、何度かキーを回してみて下さい。
【クランキングする】
クランキングはするが、エンジンが掛からない場合は、色々な種類の原因が有ります。
«キーが違う»
え?と思うかもしれませんが、実際に多いです。お客様より「エンジンがかからなくなったから見に来てほしい」との出張依頼で見てみると、キーが純正では無く外品のキーがキーシリンダーに差さっている事がよくあります。
何故、純正じゃなければエンジンがかからないのか。その理由は、最新の車のキーはイモビライザー(盗難防止)付のキーになっているからです。
キー自体は、コーナンや普通の鍵を作る所でコピー出来ますが、キーとしては使えますが、エンジンをかける事は出来ません。
クランキングはしますが、エンジンのコンピューターがキーを正常に認識しない限り、エンジンがかからない様になっています。
よくあるパターンは、いつもとは違うドライバーさんが間違えて、純正のキーじゃない物でエンジンをかけようとする事です。キー自体は、ドアのロックも解除できますので。
特に、ガソリンスタンドで燃料のタンクのキャップだけ違う外品のキーにしている場合があって、給油が終わって間違えて燃料タンク用のキーでエンジンをかけようとしてしまいますが、絶対にかかる事はありません。
意外な落とし穴ですが、最初に確認しましょう。
«燃料系»
燃料系のトラブルによってエンジンがかからない事は良くある事です。主な原因は下記の通りです。
- 燃料エレメントの詰まり
- 燃料タンクの破損
- インジェクターの故障
- サプライポンプの故障
- 燃料配管の破損
そもそも燃料が入っているのかを確認して下さい。意外に見落としている可能性が有りますからね。
次は、ディーゼル車の場合は、燃料エレメントの確認ですね。この燃料エレメントが詰まるだけで、エンジンがかからなくなりますので、いつ交換したのかを整備履歴で確認しましょう。
個人で出来るのは、おそらく燃料エレメントの交換ぐらいだと思います。
燃料タンク内のセパレーター(仕切り版)が壊れていないかを確認しましょう。セパレーターが破損して燃料タンク内のパイプを破損していないかを確認。
燃料タンクから出ている燃料の配管を点検していき、配管が潰れたり、曲がったりしていないのかを点検しましょう。
最後に、インジェクター・サプライポンプの交換です。これは、修理工場でやってもらうしかないですね。燃料系の故障は、目に見える故障もありますが、大概は交換してみないと分からない事の方が多いです。目で見て異常がなければ、一番怪しいと思う物から交換していって下さい。
«機械系»
次は機械的に、何か故障している場合です。
この場合は、知識がなければ点検するのは難しいですね。私達プロでも見つけるのに、苦戦する事もありますので、素人が対処できる事は無いと思います。
- エンジンの圧縮圧力の低下
- バルブクリアランスの狂い
- タイミングギヤ部の破損
エンジンはピストンの上下運動によって、圧縮圧力を生み出して、それを爆発させる事によって、エンジンの動力にしています。その圧縮圧力が低下する事によって、爆発させる事が出来ず、エンジンがかからなくなります。その原因は、ピストンリングの破損・インテークエキゾーストバルブの破損・メタルの損傷、などがありますが、エンジンの全て分解して点検しないと分かりません。
バルブクリアランスが著しく狂っていると、圧縮圧力を生み出す為の空気が十分に吸えなくなって、圧縮圧力が低下します。
タイミングギヤ部が損傷してしまうと、燃料の噴射のタイミングが狂ってしまう事によって、圧縮圧力は正常でも、燃料を噴射する事ができず、爆発が起こりません。
正直、機械系が壊れたら、エンジンASSY交換かエンジンOH(オーバーホール)をするしかありませんので、かなりの重整備になります。
«電気系»
電気関係の故障がしている場合です。
- ヒューズ
- リレー
- ECU(コンピューター)
- 各センサー
車にはヒューズやリレーが数多く装着されています。その中の一つでも、動かなかったらエンジンがかからなくなる事も有ります。
ちょっと知識があれば、車のヒューズBOXを見て、一つずつヒューズを見ていき、探す事も出来ます。時間はかかると思いますが。
後は、最新の車の場合は故障診断パソコンを車両に繋ぐことによって、どこが故障しているのかを表示してくれますが、故障していても履歴に残らない事もあります。
経験と故障診断パソコンを駆使して、原因を追究していくしかありません。
【まとめ】
エンジンがかからないと、あせりますよね。予定が大幅に狂ってしまいます。
そうならないように定期的に、車のメンテナンスを行う事をお勧めします。
素人・個人が出来る事には限りがあるので、しっかりとした修理工場にて、日々の点検をお願いする事によって、少しでも故障の可能性を低くしましょう。
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