【整備士】ディファレンシャル(D/F)のオーバーホール(OH)は知識と工具が必要。

整備士

逆に言えば知識と特殊工具(市販の工具)があればディーラーでなくてもOH可能です。10年以上、現場で整備士をしている私が、その理由を詳しく解説していきますね。私の経歴。

①知識

まずは、知識がなければ、全く話になりませんね。どういう構造になっていて、どの部品が何の役割をしているのかをしっかりと理解していないと、車の故障の原因の修理が出来ませんからね。正直、D/Fは車から取り外して、分解するのは、それなりの設備がある工場ならば、可能です。つい先日も、車両からD/Fを取り外して、分解しようとしたが、出来なかったのでOHをして欲しいとの依頼で、途中まで分解した単体のD/Fを持ち込まれたお客様がいました。なので、技術よりも知識が重要になる作業となります。

②特殊工具

【OH時】

分解する時に使用する特殊工具はベアリングを取り外す工具になります。これは市販のベアリング抜き(プーラー)でも全然大丈夫です。実際、私の工場も正規の物では無く、市販されている物を使用していますので。天井クレーンもあれば楽に作業出来ますが、二人で持てるぐらいの重さなので、無くてもそこまで作業に支障は無いです。

【調整時】

D/FのOH難しい所は、調整する個所がいくつもあるという所です。エンジンOHやトランスミッションOH作業にはそこまでありませんからね。その調整するのに特殊工具が必要になってきます。調整の種類も合わせて紹介します。

・フランジの転動トルク

フランジとはエンジンからの動力がトランスミッションに伝わって、変速されてプロペラシャフトに伝わって、フランジに入ります。なので、一番最初に動力が伝わる所ですね。このフランジが回る重さが

「転動トルクの調整」

になります。これには、バネばかりトルクレンチを使用します。インナーベアリングとアウターベアリングの間にスペーサーシムがあってその厚みを調整する事によって、転動トルクの重さを調整しますが・・・、このシムの種類がメチャクチャあって、その全てを揃えると、それだけでなかなかの金額になります。車種や型式によって少し違って来るとは思いますが、0.01mm~0.05mmぐらい間隔でシムの種類があります。

なので、だいたいは最初に入っていたシムを入れて、転動トルクの基準値を超えた場合にシムを注文して、基準値に入るように転動トルクを調整していきます。この作業をしっかりと行わないと、ベアリングの早期摩耗に繋がります。

・コニカルディスタンスの点検

ピニオンギヤとデフケースの間に、シムを入れてピニオンギヤの挿入量を調整します。これには特殊工具が必要で、私の工場にもありません。なので、どこの高さを測定するのかを理解し、精度は落ちますが、自作で測定しています。これも、最初に入っていたシムを入れると、だいたい基準値に入ります。

・バックラッシュ

バックラッシュとはリングギヤとピニオンギヤのギヤとギヤの隙間の事を言います。この調整作業には、特殊工具が必要になってくるのですが、別に代用出来るぐらいのレベルの物です。正規の物があれば、楽に作業出来るぐらいですかね。マグネット付きダイヤルゲージサイドベアリングを締め付けていく特殊工具(代用品でも可能)です。

このバックラッシュの調整もかなりシビアで、0.3mmぐらいのガタをダイヤルゲージにて測定する感じです。両サイドのベアリングの締め付けを調整する事によってガタを調整していきます。このガタが大きかったり、小さかったりすると異音の原因になったり、ギヤの摩耗に繋がります。

・リングギヤの歯当たり

リングギヤとピニオンギヤ部がどこで当たっているのかを確認する事です。これには光明丹(こうみょうたん)を使用します。リングギヤに光明丹と塗布して、ピニオンギヤに噛みこまして、光明丹を塗布した所にどのように当たっているのかを確認します。これには明確な、基準値が無く、修理書には「著しく歯当たりが悪い場合は調整して下さい」との記載がありました。なので、普通に組み付けていれば、まず大丈夫だと思います。もし仮に、著しく歯当たりが悪い場合は、最初からやり直しですね。

・サイドベアリングの転動トルク

全てを組み終わったら、最後にサイドベアリングの転動トルクを測定して終わりです。まぁ。普通に組み上げていれば、ずれている事は無いとは思いますが、上記3つの調整をしっかりとやっていないと、転動トルクの基準値から外れる事があるかもしれませんので、全ての調整を丁寧に行いましょう。

③まとめ

少しぐらいの経験があるからと言って、不用意にD/Fを分解するのは避けた方が良いでしょう。ある程度、経験があって、知識が無いと、分解出来たとしても、組み付ける事も調整する事も出来なくなるからです。組み付け不良があると、異音やギヤの早期摩耗に繋がるので、分解する場合は、しっかりと準備をした上で、作業を行えば、そこまで難しい作業では無いとは思いますので、知識と工具を揃えてから作業開始すれば、ディーラーじゃなくてもOH可能です。

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