トラックのギヤが入らない・入りにくい原因や対処方法を詳しく解説

今の時代、乗用車では95%以上の車がオートマを採用していますが、トラック・バスにおいてはまだまだマニュアル車が多いです

そんな、マニュアル車においてギヤが入らなかったり・入りにくかったりする事があります

その原因や対処方法、自分で簡易的に点検する方法を詳しく解説していきます

この記事を書いている私は、乗用車から大型トラック・バスなど様々な車種の車の整備をしてきました。今は、特に大型車をメインに整備をしている現役の自動車整備士になります。整備士に関する記事やトラックの不具合について解説した記事等を書いています(詳しくはこちらを参照して下さい

それでは、解説していきます

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【構造】

どういう構造でどのようにギヤを変速しているのか?

:動力の伝わり方

まずは、車の動力の伝わり方です

①エンジン ➡ ②トランスミッション ➡ ③プロペラシャフト ➡ ④ディファレンシャル ➡ ⑤アクスルシャフト ➡ ⑥タイヤ

簡単に説明すると上記のようエンジンからタイヤに動力が伝わる事によって、車は動きます

オートマ車とマニュアル車は何が違うかというと、①と②の間にある部品と、トランスミッションになります

それ以外は、オートマもマニュアルも同じ動力の伝わり方をしています

トランスミッションは多くのギヤ・シンクロ機構・ハブ等によって構成されているのに対して、オートマはソレノイドバルブ等によって構成されています

では、①と②の間にある部品は何か?答えは「クラッチ(M/T)」と「トルクコンバーター(A/T)」になります 

:クラッチとトルクコンバーター

[クラッチ]

クラッチとは、何か?

上記で説明した通り、エンジンが回転する事によって動力を発生しています

エンジンが回転する事によって、クランクシャフト回転します

クランクシャフトが回転する事によって、フライホイールが回転します

フライホイールが回転する事によって、クラッチカバーとクラッチディスク回転して、トランスミッションに動力が伝わります

部品は常に回転している状態なので、その状態でギヤを嚙合わせるのは非常に難しいので、クラッチによってその回転を一時的に止めて、ギヤを噛み合わせやすくしているのが「クラッチ」になります

[トルクコンバーター]

トルクコンバーターは常に、回転していて油圧を発生させています

クラッチと違い、回転を止めたりする事はありません

回転と止めたり、ギヤを切り替えたりしているのはオートマ内部でコンピューターによって各バルブを動かす事によって自動で行われています

なので、オートマ車は変速を自分でする必要がありません

:油圧回路

マニュアル車でギヤを入れる際にペダルを踏みますよね

そのクラッチペダルを踏むことによって油圧を発生させて、各部の装置へ送っています

[クラッチマスターシリンダー]

中型車以上の場合は、クラッチペダルと連結しています

クラッチペダルを踏むことによって、ペダルと連結しているロッドが動いて、シリンダーが押す事によって、油圧を送っています

小型車の場合は、クラッチペダル部にバキューム式のブースターが付いていて、そのブースターによってクラッチマスターシリンダーを押しています

構造・仕様が若干違いますが、役割は同じでクラッチペダルを踏むことによって油圧を発生させています

[クラッチブースター]

トランスミッションの横に取りついていて、クラッチマスターシリンダーからの油圧がかかる事によって作動します

クラッチブースターのロッド動くことによって、ロッドの先についているクラッチを断続させる機構を動かしています

小型車は油圧のみで作動して、中型車以上は油圧と圧縮エアによって力が倍増されて作動しています

:トランスミッション内部

トランスミッションの内部は、メインシャフトとカウンターシャフトと各ギヤ・シンクロ・ハブによって構成されています

ドライバーが選択したギヤに噛みこんで、変速してプロペラシャフトに伝わっていきます

インプットシャフト ➡ カウンターギヤ ➡ 選択したギヤ ➡ アウトプットシャフト ➡ プロペラシャフト

といった感じで動力が伝わっていき、減速・等速・増速・逆転をして車を動かしています

【ギヤ入り不良の原因】

上記のようにギヤを入れるのに、様々な機構・部品によってギヤチェンジが行われます

そのどれか一つでも不具合があるとスムーズなギヤチェンジが行えません

:原因①クラッチ残量無し

ギヤが入らない・ギヤが入りにくい原因で一番多いのが、クラッチディスクの残量が無い事です

クラッチディスクの残量が無くなれば、回転しているディスクが確実に止まらなくなります

その結果、回転している状態でギヤを入れようとするのでギヤチェンジをすぐ際に、ギヤ鳴りをしながらギヤが入ります

その状態は、ドライバー的にはギヤがいつもより入りにくいと感じると思います

少し、知識のあるドライバーならギヤが鳴っているのがわかると思います

クラッチディスクが完全に無くなってしまうと、ギヤチェンジが全く出来なくなるので車が動けなくなりレッカーにて移動になります

そうなると修理費用が高額になってしまうので、ギヤチェンジに違和感を覚えたらすぐに点検してもらいましょう

自走できる状態ならレッカー代がかかる事もなく、修理費用も抑えられます

どの車もクラッチディスクの残量を測れるので、今クラッチディスクは新品からどれだけ減っているのかが分かります

クラッチディスクが減ってくるとクラッチ遊びも多くなるので、その点を注意しながら運転するとわかりやすいと思います

:原因②油圧系統の異常

クラッチマスターシリンダー・クラッチブースターは定期的にメンテナンスをしないとダメな部品になっています

内部がゴム製品の部品の為、経年劣化によって本来の性能が発揮出来なくなります

ブーツをめくって内部より漏れていれば、交換orオーバーホールが必要になります

その作動に使用しているクラッチオイルはブレーキオイルと一緒で吸水性がある為、定期的に交換をしないとダメです

最低でも、車検毎に交換する事をお勧めします

油圧の点検は、クラッチブースターのストローク量によって点検出来るので、ストローク量が基準値以下だとクラッチオイルの交換やオーバーホールといった作業が必要となります

クラッチの油圧系統にエアが噛みこんでもストロークがでないので、しっかりとエア抜きを行ってからストローク量の点検を実施しましょう

:原因③トランスミッション本体

トランスミッション内部のシンクロ機構やギヤが何らかの原因によって摩耗・損傷するとギヤが入りにくかったら・入らなかったりします

トランスミッション不良の場合は、上記の①②と違って特定のギヤだけおこります

上記の①②はどこのギヤに入れようとしても同じ現象ですが、③は例えば4速だけといった感じで特定のギヤのみで起こります

お客様よりの聞き取りや、試運転(ロードテスト)を実施して特定のギヤを特定します

トランスミッションのオイルを抜き取って、オイル内に多量の鉄粉が混じっていればダメです

トランスミッションASSY交換かオーバーホールになります

:原因④その他

だいたい、上記の①~③でギヤが入らない・ギヤが入りにくいは解決すると思いますが例外もあります

私が経験した上記以外の原因をいくつか紹介します

シフト・セレクトワイヤーの渋り・固着やパワーシフトの不良(中型以上)やカウンターシャフトの折れといった感じの例外もあります

上記の例外は、①~③のしっかりと点検した上でそれでも直らなかった場合になりますので、まずはしっかりと上記の①~③を確実に点検しましょう

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