トラック・バスに搭載されている排気ガス除去システムについて解説します

今のトラック・バスには排気ガス中のススを大気に開放しない為の装置が取り付いています

各社メーカーによって、その呼び名は違ってきますが、排気ガス除去システムの機能的にはほとんど同じです

日野自動車は「DPR」、いすゞ自動車は「DPD」、三菱FUSO・UDは「DPF」と呼びます

では、どうようなトラブルがあるのか解説していきます

まず、このブログを書いている私の紹介を簡単にします。乗用車・トラック・バスの整備を20年弱やっている今も現役の整備士になります。転職経験もあって、今は大型車をメインに整備を行っています。詳しくはこちらをクリックして参照して下さい。

※下記の説明は、私自身がよく整備をするDPR・DPDについて説明していきます。

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【役割】

3つ共に呼び方が違っているだけで、その役割はほとんど同じです

排気ガス中に含まれている有害な粒子物質(PM)を大気中に排出する事の無いように捕集する事によってクリーンになった排気バスを大気に排出する装置になっています

昔の人ならトラックが黒煙を排出しながら走行している光景を良く見かけたと思いますが、最近のトラックはあまり出ていないと思います

その黒煙を排出しないように装着された装置です

昔の車両や排気バスシステムに故障がある車両の場合は、黒煙を排出しながら走行していますね

【構成部品】

いくつかの部品によって、構成されているので一つずつ役割を解説していきます

:排気ブレーキ

普段は、アクセルを放した時に閉じる事によって排気ガスによってエンジンにブレーキをかけています

ですが、DPR再生モードに入ると、排気ブレーキが閉じる事によって、エンジンにわざと負荷をかける事によってエンジンの回転数が上がり燃料の噴射量が増加します

この排気ブレーキの閉じ具合によって、エンジンの負荷がかわり燃料の噴射量が変化します

:酸化触媒

DPRフィルターよりも前に付いています

白金やパラジウムなどの貴金属が中に入っていて、その触媒作用によって排気ガスの浄化を行っています

DPR再生(自動・手動)に入っていない時に排気ガス中のススの浄化を行っていますが、ススの全てを浄化出来る程ではないです

:DPRフィルター

上記の酸化触媒で、浄化出来なかった大部分のススを捕集し、蓄積するのがDPRフィルターになります

マフラーの部分の筒状の長い部分になります

全てのススをこのDPRフィルターが浄化する事によって、クリーンな排気ガスが大気に放出されます

:差圧センサー

DPRフィルターのススの蓄積量を検出しているセンサーになります

DPRフィルターの前と後ろ(大気)との圧力差を見ています

ススが設定値以上になると、ECU(エンジンコンピューター)へ信号を送って、DPR自動再生モードに入って、ススを焼きます

:燃料添加弁

この部品は、最近の車には搭載されていますが、一昔前の車両には付いていません

昔の車両は、燃料添加弁ではなくインジェクターによって燃料の噴射を行っていました

ターボと酸化触媒の間に取り付いています。DPR再生モードになると、燃料を噴射する事によってDPRの温度を上昇させます

DPR再生モードに入らないと作動しない部品になります

:排気温度センサー

DPRフィルターの温度の測っているセンサーになります

イン側とアウト側にそれぞれ取り付いていて、最高温度は600℃前後ぐらいになります

【故障】

整備士なら分かると思いますが、この装置はほんとうによく故障します

DPRフィルター・酸化触媒は一応半永久的には使用出来ますが、定期的なメンテナンスが必要になってきます

2~3年に一度は、DPRフィルター・酸化触媒の清掃が必要です

DPRフィルターには煤やオイルの燃えカスが溜まっていきます

その燃えカスを除去しないとドンドン溜まっていって、最終的には交換をしないとダメになります

なので、定期的な清掃・交換が必要になります

車の使用の仕方によっても、故障の頻度は全然変わってきます

例えば、常に高速道路を走っている大型トラックの場合は、排気バスの温度が高い状態が続きます。その状態が排気バスの浄化が一番良いので、煤が詰まりにくいです

逆に、街中を走っている車はストップ&ゴーが多いので、排気バスの状態が非常に悪くなるので煤が詰まりやすくなります

原因①:DPRフィルター

上記でも説明した通り、故障原因で一番多いのがDPRフィルターの詰まりになります

DPRフィルターが詰まってしまうと、正常に煤を燃焼出来なくなり燃焼温度が下がる事によって、DPR再生が完了せずに、エンジンチェックランプが点灯してしまいます

煤が詰まっているという事は、自動で燃焼するDPR自動再生モードにも入らないので、手動再生のランプが頻繁に点灯するようになります

なので、定期的なメンテナンスが必要になります

原因②:インジェクター・燃料添加弁

燃料を噴霧している部品になります

インジェクターのタイプと燃料添加弁のタイプがあります。

燃料添加弁の場合は、取り付いている箇所がエキゾーストパイプに取りついていて、そのフォルダーに煤が溜まってしまう事がよくあります。この場合は、交換ではなく清掃するば正常に戻る場合もあります

インジェクターの場合は、点検方法があまりないので上記のDPRフィルター交換&清掃時に、一緒に交換する場合が多いです。

原因③:差圧センサー

本来なら、煤が一定以上溜まった場合にエンジンコンピューターが自動再生モードに入れますが、差圧センサーが正常に機能していないと、DPR自動再生モードに入らない事があります

その場合は、頻繁に手動再生ランプが点灯する事になります

手動再生が正常に終了するのであれば、差圧センサーの信号が異常なのかもしれないので、交換する必要があります(※DPRフィルターが異常が無い場合)

原因④:排気ブレーキ

排気ブレーキは上記でも説明した通り、DPR再生時の燃料噴射量を調整しています

経年劣化や弁の閉じすぎ・開きすぎによって基準値を外れてしまい、燃料噴射量が増減する事によって正常に再生が完了しなくなります

基本的には排気ブレーキの弁を調整する事によって噴射量を調整しています

しかし、通常走行時の排気ブレーキの利き具合が変化してしまうので、あまりにも基準値を超えている場合は交換した方が良いですね

原因⑤:EGR系統

正常な状態だとDPR再生モードになると、EGRバルブが閉じます

しかし、経年劣化や煤がバルブに付着する事によって、完全に閉まらなくなってバルブが開いた状態になると再生がスムーズに完了しません

エンジンチェックランプが点灯したら良いのですが、微妙な時は点灯しないのでバルブを取り外して点検する必要があります

故障診断機でも簡易的には点検が可能ですが、取り外して点検するのが一番確実ですね

原因⑥:その他

上記の5つがだいたい主要な故障原因になります

その他には、サーモスタットの機能不足によってオーバークールになって再生に入らないとか、ターボの機能低下によって再生が終わらないとか、排気漏れによって再生が完了しないなどなど

まだまだ、色々な箇所の故障によって再生不良になる事があります

【まとめ】

DPR系統の故障は、どのメーカー・どの車種でも頻繁に起こる故障です

春初秋冬関係なく、突然おこる故障でもあります

不具合によっては、前兆がありますが全く前兆無しでチェックランプが点灯する事もあります

ただ、チェックランプが点灯しただけなら良いのですが、エンジンECUが出力制限をかけてしまう事があります。そうなると、いくらアクセルを踏んでも全くエンジンの回転数が上がらずスピード出す事が出来なくなります

上記でも説明した通り、構成部品も多く、エンジンの制御も複雑なので、故障診断が難しいです

同じ故障は無く、車によって様々です。車の使用環境・月の走行距離・1回の運行距離・経年劣化によって変わってきます

なので、これまでの経験値が非常に重要になってきます

これは、何台も故障診断をするしか養えない技術です。たくさんの車を診断してその経験値を養って確実な整備が出来るように頑張っていきましょう

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