トラック・バスのエンジン始動不良について、解説していきたいと思います

整備士

先週、エンジン始動不良の車両がレッカーにて入庫してきました

結論から先に言いますと、始動不良の原因は、DC/DCコンバーターの不良によりエンジンECU(コンピュータ)の電源電圧の不良でした

※DC/DCコンバーターとは・・・

DC/DCコンバーターとは、トラック(バス)なら24V、乗用車なら12Vバッテリーを使用しています。しかし、センサーやECU(コンピューター)には適切な作動電圧があります。その作動電圧に調整するのが、DC/DCコンバーターになります。元の電圧より低い電圧にする事を「降圧」、高い電圧にする事を「昇圧」と言います

危うく、誤診をする所でしたので、説明していきますね

簡単に、私の経歴はこれまで乗用車・トラック・バスの整備を20年余りしている現役の整備士になります(もっと詳しく知りたい方はこちらをクリック)

過去にも、エンジン始動不良についてのブログを投稿してますので気になる方は、下記のブログも参考にしてみて下さい

まず、点検したのが本当に「エンジンがかからないのか」です

意外にも工場に持ってきたらエンジンがかかってしまう事もありますので

車両にいき、キーを回すと「ガガガガ」という音がするだけで、バッテリー上がりのような現象でスターターが回りませんでした

ワンチャン、バッテリー上がりか?とも疑いジャンパーケーブルを繋いで、再度キーを回したらスターターは快調に回りましたが、エンジンはかかりませんでした

営業マンもフロントマンもおそらく、燃料系統のインジェクターか燃料ポンプ(サプライポンプ)と思っていました

私も最初は、そう思っていましたが故障コードを読み取るためにパソコン(診断機)を車両に繋いだ時に、エンジンのコードが読み出せませんでした

エンジンがかからなくても、エンジンECUに電源が入っていれば読み出す事が出来ます

この瞬間、燃料系統の不具合は無くなりました

たまに、状況だけで燃料系統と判断してインジェクターやサプライポンプの交換をしてしまう整備士や営業マンがいます。これが誤診の原因になります

確実に、燃料系統と判断出来るまでもう少し点検しなければいけませんね

さて、故障コードが読み出せないのを確認して、メーター内を見てみると、キーをONにした時に点灯していないとダメはエンジンチェックランプが点灯していませんでした。チェックランプが点灯していないという事は、エンジンECUに電源が入っていないという事になります

逆にキーONで、点灯しているとダメなDC/DCコンバーターのランプが点灯していました。キーをONにした瞬間、数秒点灯して消灯するのが正常です。

では、点検していきます。まずはエンジンECUの+B(電源電圧)を点検すると0V。やはり、電源電圧系統の異常ですね。

そのに上流あるヒューズを一応点検するも切れていませんでした

そのヒューズの上流に付いてるのがDC/DCコンバーターがです

入力は24V入っていましたが、出力は0Vでした。コネクターの抜き差しをしても変化無し

確実にDC/DCコンバーターの内部不良と断定出来る点検結果を得れました

ここまで、確実に点検を行わないと誤診につながって、交換しなくても良い部品まで交換する事になってしまいます

車の状況、点検結果から確実に不具合を特定出来るには、まずは正常な車の状態を知る事から始めましょう。

今回、状況だけなら燃料系統(インジェクターかサプライポンプ)の不良の可能性が非常に高かったので誤診する所でした

皆さんも誤診の無いように、確実な点検を実施して、無駄に部品を交換する事のないようにしましょうね