トラックに乗っているドライバーなら一度は経験したことがある、ストップ&ゴーを繰り返すと、後ろの方より「ガコガコ」「ドンドン」といった異音・振動が聞こえてくる症状。
その原因の大半は「リヤスタビライザーのブッシュが抜け」が原因でおこっている事がほとんどです。※リヤスタビライザーのブッシュが抜けてなかったら、上に取り付いているVロッドのブッシュ抜けの時もあります。
整備工場へ点検・整備にて入庫した車を動かした際に、後ろの方より異音が発生していたらまずは上記の二か所の点検を行います。
お客様からの電話でも車を動かした時に後ろの方で何か異音がするといった電話相談もよく受けます。
私自身はトラックディーラーにて整備士をしている者です。
下記の記事ではその交換方法や交換の必要性・交換するにあたっての注意事項等を解説していきます。この記事を読んでもらえたら、リヤスタビライザーについての全ての内容を理解する事が出来ると思います。
【スタビライザーの役割】
まず、スタビライザーとは何か。あまり車に詳しくない人にとっては初めて聞く名前だと思います。
サスペンション機構の一部で、エアスプリングのブラケットとフレームを繋いで車両の振動や旋回時等のロール(車両の傾き)を抑える働きがあります。
定期点検・車検等で点検する項目ですので、交換頻度も多いです。
特に、大型トラックで常に積載量が多い車両等ではブッシュが損傷しやすく、よく抜けています。
【必要工具】
リヤスタビライザーのブッシュを交換するには、それなりに工具も必要ですし、特殊工具も必要になります。これが無いとまず交換する事は不可能です。
[ブッシュ抜き]
ブッシュを抜いて交換する工具が絶対に必要になってきます。ブッシュは圧入されているのでハンマー等で叩いても抜けません。
抜く方法はプレス機によって圧入します。これには2パターンあります。
①固定式
固定器のプレス機になります。
移動式の工具よりもより強い圧力を加える事が出来ます。
下記の移動式の工具は主にスタビライザーの交換でしか使用できませんが、固定式のプレス機はそれ以外にも色々なブッシュの抜いたり・入れたり、スプリングを抑えるのに使用したりと様々な用途で使用する事が出来ます。
しかし、欠点は動かす事が出来ないために、この場所へ部品を持って行かないとダメだという事です。
スタビライザーの場合は、天井クレーンかホークリフトによって吊らないと交換する事が出来ません。
②移動式
移動式といって、エアホースを繋ぐことが出来ればどこでも交換が可能になる工具になります。
スタビライザーという部品は非常に重く持ち運ぶのがしんどいので、この移動式があれば車の横で作業が可能になります。
加圧する力もそこそこ強いです。上記のプレス機よりは加圧する力は弱いですが、十分に使える工具だと思います。
問題があるとすれば、工具の値段が非常に高い事ですね。
上記の物よりも安い物もあれば、高い物もあります。
しかし、スタビライザーのブッシュ交換作業は1年間で何十回もあるので、値段以上の利益はすぐに取り返せるとは思います。私は個人の整備工場を経営していたら確実に購入していると思います。
[ジャッキ]
スタビライザーを交換するにあたって、車をジャッキアップしなければ交換作業を行う事は出来ません。
整備工場にフロアリフトのような地面が下がるレーンがあれば、ジャッキアップしなくても交換する事が出来ます。
※上記の過去記事にて詳しくジャッキについて解説していますので、参考にして下さい
ジャッキアップしなければ、狭すぎて作業が出来るスペースが無いからです。
[その他の工具]
上記、二つがあれば交換作業はとりあえず出来ます。
後は、インパクトとハンマー、大のマイナスドライバーといった整備工場なら当たり前にある工具があれば大丈夫です。
ガッチャとダルマジャッキ等があれば、楽に取り付ける事が出来るかと思います。資金に余裕があれば購入して揃えておきましょう。
【交換手順】
ここからは交換する手順を解説していきます。
[①ジャッキアップ]
車をジャッキアップします。
ガレージジャッキやフレームジャッキを使用して車を上げていきます。
後ろだけでも良いのですが、車両が斜めになってしまうので、整備工場の設備にもよりますが、可能なら前も後ろも上げるようにしましょう。
[②位置決め
①の状態からジャッキを下ろしていきます。
その時に、交換する軸のタイヤの下に大きな木を敷きます。これによって、作業スペースが出来ます。
タイヤが木に乗ってスタビライザーが真っすぐになるまでジャッキを下げていきます。
[③取り外し]
②の状態になったら、取り付けボルトを外していってスタビライザーを取り外します。
スタビライザーはかなりの重量物の為に、手や足などが挟まれないように注意しながら取り外しましょう。
[④ブッシュ抜き]
スタビライザーを取り外す事が出来たら、ブッシュを抜いていきましょう。
固定式か移動式のプレス機等で交換しましょう。
[⑤取り付け]
④でブッシュの交換が終われば、逆の手順でスタビライザーを取り付けていきましょう。
スタビライザーは右左が決まっているので、間違わないように取り付けましょう。
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