車の取扱説明書にも記載されている注意事項に「オーバーラン」と呼ばれる現象があります
それは何を意味するのかというと、簡単に言うと「エンジンの限界回転数をオーバーしてしまった」という事です
重度の場合は、オーバーランさせてしまった瞬間に、エンジンが破損して走行不能に陥ってしまいます
軽度であってもエンジン各部をしっかりと点検しないと、今度予期せぬトラブルが発生する場合があります
この記事では、ディーゼルエンジンにおける「オーバーラン」について詳しく解説しています
簡単に、この記事を書いている私の紹介をしますね。自動車の整備士を20歳からやっていて、今年42歳になった今でも現役の自動車整備士をしています。乗用車から大型トラック・バスを整備してきました。現在は主に大型車をメインに整備をしています。(詳しくはこちらを参照ください)
では、解説していきます
①オーバーランとは?
そもそも、オーバーランとは何か?
この記事の冒頭であえて、「ディーゼルトラック」と表現したのには理由があります
それは、ガソリンエンジンではオーバーランは100%とは言いませんが、起こりません
最高エンジン回転数がガソリン車とディーゼル車では全く違うからです
ガソリン車の最高エンジン回転数は軽く10000rpm以上ですが、ディーゼル車は3500rpm程度です

なので、ディーゼルエンジンの場合はすぐに最高エンジン回転数に達してしまいます
この[最高エンジン回転数=限界エンジン回転数]になります。この限界エンジン回転数をオーバーしてしまった事をオーバーランと言います
②何故なるのか?
普通に走行していれば、まずなる事は無いと思いますので安心して下さい
では何故なるのか?それは、操作ミス・間違えた操作をしてしまった時におこってしまいます
[操作ミス]
これが、一番多いと思います
オートマ車しか乗った事の無い人おそらくわからないと思いますが、マニュアル車は自分でギヤを入れていかないとスピードが上がりません
「2速➡3速➡4速➡5速➡6速」とスピードが上がるにつれてギヤをシフトしていきます
このギヤをシフトさせる際に、操作ミスが発生する事があります
本来なら、5速に入れるつもりが間違えて3速に入れてしまいます
そうするとどうなるかというと、エンジンの回転数が一気に上がってしまいます
その結果、最高エンジン回転数を超えてしまいオーバーランになってしまいます
シフト操作の間違いに気付いて、すぐにギヤを抜けば大丈夫なのですが完全にエンジンの回転数が上がってしまったらダメです
[間違えた操作]
間違えた操作というよりは、車の事を知らない人はやってしまうかもしれませんね
ガソリンエンジンのマニュアル車を乗った事のある人なら、やった事があると思います
それは、「エンジンブレーキ」です※単車でもやるやつです
ギヤをわざと1つ落として、ブレーキを踏まずにエンジンのブレーキによってスピードを落とすやり方です
これは上記でも説明しましたが、ガソリン車の限界エンジン回転数が高いから可能な操作になります
「間違えた操作」とはこれをディーゼル車でやってしまう事です
初めて、ディーゼル車の乗った人ならやってしまう間違いになると思います
私が大型免許を取得したのが20年も前になるので、教習所で教えてもらったのかは全く覚えていませんが・・・
単車やガソリンエンジンのマニュアル車に乗っている人ならやってしまう間違えかもしれませんね
ディーゼル車の限界エンジン回転数は非常に低い為に、このエンジンブレーキをやってしまうとすぐに超えてしまい、壊れてしまいます
[例外]
上記の2点以外でも、例外はあります
実際にあった事例をいくつか紹介します
①:燃料系統の故障によって燃料が多量に燃焼室内に噴霧されてしまってのオーバーランが発生
②:ターボのベアリングが破損した事によって、多量のオイルが燃焼室内へ入ってしまってオーバーランが発生
③:エンジンオイルが多すぎた事によって、オイルが燃えてしまってオーバーランが発生
と、いった感じで何かの部品が故障・破損した事によってもオーバーランは発生してしまいます
③対処方法
まず、大前提としてオーバーランをさせないようにしましょうね
万が一、オーバーランをしてしまったらどうすれば良いのか?
[原因①]
まず、オーバーランをさせてしまった原因を考えましょう
操作ミスや間違えた操作をしていなかったか?
操作ミスや間違えた操作をしてしまった場合は、まずは車を停車させてエンジンの音を確認して下さい
金属音(カンカン・タンタン)のような異音がしていないか?
いつもと比べて、明らかに変な異音がしていないか?
音がいつもと違ったのなら、エンジン内部が損傷している可能性が非常に高いのでそのまま走行するは危険なので、レッカーでの移動を推奨します
音がいつもと同じで、普通にエンジンが始動出来たとしても安心してはダメです
一度、ディーラーや修理工場へ持ち込んで点検する事をお勧めします
[原因②]
上記の原因のような操作ミスは絶対無い場合は、確実にエンジン内部の損傷があります
操作ミスがなくて、オーバーランをしてしまったら、確実にマフラーより多量の白煙・黒煙が排出されているはずです
その場合は、走行は不可なのでレッカーで修理工場やディーラーへ持って行って点検・修理をしてもらいましょう
④損傷部品
オーバーランをしてしまったら、エンジンのどの部品が故障・損傷するのか?
[ボルト]
クランクシャフトの前後に取りついているボルトが折れます
フライホイール・クランクプーリーと呼ばれる部品の取り付けボルトになります
エンジンの回転数が高くなるという事は、クランクシャフトの回転も高くなるという事です
そうなれば、想定されている以上にボルトに負荷がかかってしまい限界を超えると折れます
クランクプーリーはすぐに点検・交換出来ますが、フライホイールはトランスミッションを取り外して、クラッチ一式を取り外さないと点検も交換も出来ない部品になります
[ロッカーアーム]
エンジンの上部に取りついていて、インテークバルブ・エキゾーストバルブを押すアームになります
そのアームが折れたり、ひびが入ったりします
その他に、関連するボルト・ナットが緩んでしまいます(高速振動により)
これらの点検は、エンジンの上部のカバーを取り外しての点検になります
[まとめ]
オーバーランをさせてしまったら、正直どこが損傷しているのが分かりません
上記であげた以外にも損傷している可能性もあります
交換出来る箇所は交換をして、様子を見ながら車を使用するしか無いと思います
軽度のオーバーランならそれでも良いのですが、重度のオーバーランの場合はエンジンASSY交換になると思います
④総合まとめ
オーバーランという現象は、普通に走行していればまず発生する事は無いと思うので安心して車を運転して大丈夫です
しかしながら、少しの気の緩みによる操作ミスや間違えた操作、部品の損傷によって私の会社でも年間数件は発生しています
オーバーランをおこしてしまった車両は少なからず、エンジン各部にダメージを与えている可能性が高いです
この先、5年・10年とその車を乗っていく予定なら、軽度・重度に関係なくしっかりとした点検が必要になると思います
オーバーランをおこしてしまったのにも関わらずそのまま使用するのだけは避けましょう
予期せぬトラブルが発生して、重大な事故に繋がる恐れもありますので
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