吹き返しとは?車で起こる現象でそのままにしておくと大変なことになります。その原因は?対処方法を解説します。

整備士

吹き返し」とは冷却水(以降LLCと表現します)のリザーバータンクにボコボコと気泡が出て、LLCがエンジン側よりタンク側の方へ流れてしまい、タンクよりLLCがあふれてしまう現象の事を言います。

エンジン内部の水路に何らかの原因で空気が入ってしまって、その空気の圧力によってLLCがタンク側に戻されて、エンジン内部のLLCの量が減っていってしまいます。

その状態のまま車を使用し続けると、LLCの量が規定量よりも減っているために水量ブザーがなったり、オーバーヒートを起こし最悪の場合はエンジンが損傷して交換しないといけなくなります。

そうならない為に、吹き返しの原因について現役のトラック整備士をしている私が解説していきたいと思います。

まず、吹き返しの原因となるものは以下の項目になります。

  1. ラジエーターキャップの不良
  2. シリンダーヘッドガスケット不良
  3. ウォーターポンプ不良
  4. エアコンプレッサーヘッド不良(トラックのみ)
  5. EGRクーラー不良

一つずつ解説していきます

【吹き返しの原因個所】

①ラジエーターキャップの不良

ラジエーターキャップとはラジエーターの上部に取り付けられている部品の事で、「気密」「加圧」「減圧」という機能があります。

ラジエーターキャップ自体は消耗品なので、何年かに一度は交換しないとダメな部品になっています。そのラジエーターキャップの機能が低下する事によって、吹き返しの原因つながることがあります。

ラジエーターキャップは見ただけではその機能を果たしているのか分からないので、そこまで部品代は高くないので、一度交換してみましょう。

②シリンダーヘッドガスケット不良

吹き返しの故障原因の中で、一番多い原因になります。

シリンダーヘッドガスケットとはエンジンブロックとシリンダーヘッドの間に入っているガスケットの事です。いわば、エンジンの中枢の部品となります。

このガスケットが何らかの原因によって損傷すると、エンジンで発生した圧縮圧力のエアがエンジン水路に流れてしまって、吹き返しの原因になります。

この作業は、エンジン上部をほとんど外さないと交換出来ないので、時間のかかる作業になります。

③ウォーターポンプ不良

ウォーターポンプとはエンジンの水流を作って、LLCをエンジン各部に循環させるポンプとなっています。

そのポンプのシャフトに付いているシールが劣化する事によってそこから空気を吸ってしまう現象になります。

④エアコンプレッサーヘッド不良(トラックのみ)

トラックのみというよりは、エア式の車には必ず付いている部品になります。乗用車のようなバキューム式には付いていません。

エアコンプレッサーとは車に必要なエアを作る部品で、ピストンの上下運動によって、エアを圧縮して、車の各装置へ送っています。そのエアコンプレッサーの上に付いているのがコンプレッサーヘッドになります。②で紹介したシリンダーヘッドの小さいバージョンだと思って下さい。

⑤EGRクーラー不良

最後に、最近特に増えてきた不具合ですね。EGRクーラーとは、排気ガスの一部をインテーク側に戻す時に、排気ガスを冷やして、空気の密度を高くして、インテークに送る部品になります。

その排気ガスが通った時に、EGRクーラーの内部が損傷していて、その損傷部より、排気ガスがエンジン水路に入っていき、吹き返しの原因になります。昔はあまりなかったのですが、最近特に増えて来た不具合になりますね。

次に、①~⑤のどれが吹き返しの原因になっているのか、判断する方法を解説します。あくまでも、15年以上整備士をしている私の意見なので、絶対ではありませんのでご了承下さい。

【吹き返しの原因個所の判断基準】

①気泡の出方の種類によって判断出来る

ラジエーターキャップを取り外して、下のエア抜き用のタンクを付けた状態で、気泡の確認をします。

だいたい、下記の3パターンになります。(数字は上記の原因個所の番号)

  • 何も泡が出てこなければ、①
  • ボコボコと激しい気泡が出ている場合は、② or ⑤
  • 蟹が泡をふいているような細かい気泡の場合は、③ or ④

個人的な見解です。細かい気泡でも②のシリンダーヘッドガスケットがダメな時もありますので。あくまでも、目安です。

②溶液反応を見る

ガスリークテスターを使用するやり方です。ガスリークテスターとは、空気中の二酸化炭素に反応して、溶液の色が変化する物です。

最初は青色をしています。

  • 青 → 青  の場合は、③ or ④
  • 青 → 黄色 の場合は、② or ⑤

絶対ではありません。青色の場合であっても②の時もあります。これもあくまでも目安です。

③一つずつ潰していくやり方。

これは、実際にやっているやり方です。この方法が一番、信頼出来るやり方になるとは思います。

  1. まずは、ウォーターポンプにかかっているベルトを取り外します。これで、気泡が消えたら③のウォーターポンプ不良となります。
  2. 次に、EGRクーラーの入り口を閉じます(蓋をするかパイプを取り外します)。これで、気泡が消えたら、⑤のEGRクーラーの不良となります。
  3. 次に、エアコンプレッサーがエアを汲んでいない状態にします。これで、気泡が消えれば、④のエアコンプレッサーの不良となります。
  4. 上記、3つをやっても気泡が消えない場合は、②のシリンダーヘッドガスケットの不良となります。

【例外】

人為的な要素によっても、吹き返す事があります。

実際に、私の職場であった事ですが、吹き返しの点検をすると、エンジンを止めた途端に、噴水のようにLLCが噴出しました。作業履歴を確認すると1ヶ月以内にウォーターポンプの交換作業していました。それ以降、吹き返しの現象が出だしたようです。ウォーターポンプを一度外してみると、なんと・・・「ウエス」が詰まっていました。原因はこのウエスでした。ウエスが水路を塞いだ事によって、水圧がそこから行けなくなって、エンジンを止めた瞬間に逆流して、LLCがタンクに戻ってきていたようです。

経年劣化による吹き返しも有ります。長い間、車を使用していると、LLCの濃度が薄くなって、だんだんを水に近づいていき、エンジン水路が錆びていきます。その錆びによって、エンジン水路が詰まると、エンジンの水圧の逃げ場がなくなって、吹き返しのような現象になります。

【まとめ】

吹き返しの原因は様々で、その原因を断定する事は正直難しいです。

同じ現象・同じ気泡具合でも、不具合箇所が全然違ったりします。

上記の内容で少しでもその判断基準の目安にしてもらえれば、そこまで診断ミスをする事は無いとは思いますが、ひとつずつ交換していくしかないのが現状ですね。

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