大型トラックやバスにおいてエアの溜まりが悪い時、何が原因なのか?

整備士

乗用車や小型のトラック・バスを除くと、ほとんどの車でエアが使用されています

ブレーキやトランスミッション・サスペンションと色々な箇所で使用されています

そのエアの溜まりが悪くなると、車の機能が損なわれたり、走行出来なくなったりします

この記事では、エアの溜まりが悪い原因や点検方法を紹介しています

簡単にこの記事を書いている私は整備士歴約20年の今でも現役の整備士をしている者です。乗用車から大型車まで幅広い車種の整備経験があります。現在は、大型車をメインに整備をしています(詳しくはこちらを参照して下さい)

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【エアとは?】

一般の人にとってはあまり馴染みが無いかと思います

トラックやバスといった重量が重たい物を動かしたり、止めたりするには人間の力では不可能です

何トンもある物を止めるにはそれなりに強力な力が必要になります

乗用車や小型トラックの場合は、負圧(バキューム)の力によって力を倍増させていますが、大型車では負圧では全く力が足りません

なので、負圧よりも強力なエア(圧縮された空気)によって車に必要な力を得ています

【仕組み】

車に必要なエアが作られる仕組みを簡単に説明します

①エアコンプレッサー

エアコンプレッサーと呼ばれる部品によって、エアが作り出されます

簡単に言えば、小さいエンジンのような物です

ピストンがあって、それが上下運動をする事によって空気が圧縮されます

昔は、ツインタイプもありました今の車はほとんどがシングルタイプになっていると思います

②エアドライヤー

エアコンプレッサーより送られてきた圧縮エア内に含まれているオイル・水分を取り除いています

オイル・水分を取り除いてやらないと、エア配管内へ混入してしまいます

エアによって駆動されている各装置のゴム製品は、オイル・水分が十分に取り除かれていないとすぐに劣化してしまいます

車にとっては非常に重要な装置だと思います

③エアタンク

エアドライヤーより送られたエアを貯めるタンクになります

エアタンクのエアと保持して、安全にエアを供給する為に4つの部品が取り付いています

  • チェックバルブ :一方通行のバルブでエアが逆流するのを防いでいます
  • セフティーバルブ:一定以上のエア圧になるとタンクが爆発しないようにエアを逃がす
  • ドレンコック  :エアタンク内溜まったオイル・水分を排出する
  • 圧力センサー  :エアタンク内の圧力を測定しています

上記の4つの部品がエアタンクに取り付いています

④分配

エアを各装置へ分配しています

ブレーキ系統・サスペンション系統・トランスミッション系統・補器系統といった感じで、エアを分けて各装置へ送っています

そうする事によって、1つの系統が壊れても全ての系統が動けなくなることを防いでいます

⑤ホース・パイプ

装置と装置を繋いでいるのは、ホースやパイプになります

最近の車は、ワンタッチで抜けるタイプのホースが取り付いている事が多いです

昔の車だと、ほとんどパイプになっています

【エアが溜まらない原因】

では、エアが溜まらない原因を解説していきます。私が過去に修理した内容も織り交ぜて解説していきます

①エア漏れ

まず、一番多いのがエア漏れですね

エア漏れをしている場合、エアコンプレッサーがどんなにエアを作っていても漏れている箇所からエアが抜けていってしまいます

なので、いつもよりもエアの溜まりが悪く感じるかもしれません

車のエアの気密性は非常に高いので、3日ぐらいおいていても正常な車の場合は全く減りません

エア漏れがしていないかをまずは点検しましょう

車には色々なバルブが付いているので、それを一つずつ点検していきましょう

バルブ以外にも実際にあったのは、途中のホースに小さい穴が空いていたり、パイプが経年劣化によって腐食してそこからエアが漏れていた事例がありました

②エアコンプレッサー

上記で説明した通り、エアを作っている部品になります

このエアコンプレッサーの経年劣化やピストンの不良によってエアを作る量が減る事によって、エアの溜まりが悪くなります

後は、エアコンプレッサーの機能の一つとして、エアが溜まったら、それ以上にエアと作らない機能があります

その機能が不具合を起こしている場合もエアが溜まりません

エアコンプレッサーのオーバーホールかASSY交換が必要です

実際にエアコンプレッサーを分解すると、ピストンリングが破損していたり、内部の機構が壊れていた事がありました

③エアタンク

エアタンク内に多量の水が混入しているとエアが溜まりが悪くなります

エアタンクには、下部に水・オイルを抜くためのドレンコックが付いています

車によって、その数は色々ありあすが、最低でも2~3個は付いています(バスだと5~6個付いています)

運行前に、その全てのドレンコックを開けて内部の水・オイルを排出してから運行を始めるようにしましょう

エアタンクのセフティーバルブもよく不具合を起こします

規定量以上にならないと開かないバルブなのに、常時空いていたりしますので、そこら辺も一緒に点検しましょう

④エアドライヤ

エアドライヤーを定期的に交換していれば、それほど不具合はおこりませんが、長期間(3年以上)交換していない場合は、不具合が発生します

エアコンプレッサーより送られた来たエアを正常ならエアタンク等に送りますが、そのまま大気に排出してしまう事があります

エアを貯めた時に、パージ(エアが一定以上溜まった時に排出するエア)した際にオイルが多量に排出されていれば、すぐに交換が必要になります

エアドライヤーのメンテナンス不良は、エア配管全ての不具合につながるので車検毎か最低でも2年1回はメンテナンスが必要だと思います

これを怠ると、他の装置に悪影響を与えてメンテナンスを行っていれば壊れなかった装置も壊れてしまいます

⑤その他

だいたい、上記の点検で問題無くエアが溜まらない現象は解決出来ると思いますが、例外も存在します

少し古い車のエアの溜まりが悪い車を点検して際に、エアコンプレッサーオーバーホールをしてもほとんど、現象に変化が無かった車がありました。それは、途中のエアホールの内側が閉塞した状態になっていました。あまり見た事の無い状態でしたね

メーターはエアが溜まっていないと表示されているのに、実際はエアは溜まっている状態だった車もあります。これは、エアプレッシャースイッチの不良でした。実際に、全てのエアタンクのドレンコックを抜いてみると全てエアが排出されていました

エアを分配しているプロテクションバルブの一つの通路が詰まっている車もありました。これは、見つけるのに時間がかかりましたね。プロテクションバルブの出口のホースを一つずつ外していくと一つだけエアの排出が無い箇所がありましたね

と、いった感じで例外も存在しますが、一つずつエア経路を点検していけば、発見できるかと思います

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