11月~1月にかけて一番、タイヤの脱落事故が発生しています。その大半は11月にタイヤを夏タイヤから冬タイヤに交換している事が分かっています。
下記のグラフを見て分かるように、11月~1月の発生件数が他の月より多いのが分かりますよね。
しかし、別に夏タイヤから冬タイヤに交換したからといって脱落するわけではありません。夏の7月~9月にも発生している訳ですから。
では、何が原因でタイヤが脱落してしまうのかを、現役の整備士で主にトラック・バスの修理を15年以上している私が解説していきたいと思います。
【11月~1月に脱落事故が集中する理由】
まずは、11月~1月に事故が多発する原因は、11月に夏用タイヤから冬用タイヤに交換する車両が多いという事です。
乗用車の場合は本格的冬に入り、雪が降りだしそうな頃にスタッドレスタイヤへ交換すると思いますが、トラック・バスの場合は冬の前・雪が降り始める前に行いますので、どうしても11月に集中してしまいます。
そうなると、いつも以上にタイヤ交換をする車両の台数が多くなり、その結果、一台当たりのかけられる作業時間が短くなって、作業自体が雑になってしまい、丁寧で正確な作業を行う事が出来ずに作業ミスをしてしまい、タイヤ(車輪)の脱落事故に繋がります。
これが、11月~1月にタイヤの脱落事故が多い要因になっていると思われます。
【タイヤの締め付け方式の違い】
大型車のタイヤを締め付ける方式には2通りのパターンがあります。
・JIS方式
これは、左右で取り付けるボルト・ナットが違ってきます。
車両の右側は右ネジ・車両の左側は左ネジになっています。一般的なボルト・ナットは右ネジで時計回りに回すことによって締まっていきます。逆に、左ネジは時計回りに回すと緩みます。
昔の車両にはこの方式が使われています。見分け方は、ボルトの先端に「L」か「R」と記載されています。L=左ネジ、R=右ネジとなっていますので間違わないようにしましょう。
・ISO方式
これは、今の主流の付け方になっています。2009年排出ガス規制(ポスト新長期規制)適合車からこの方式に変更されました。なので、新しい車は大型車メーカー4社共にこのISO方式を採用していますので、全てISO方式になっています。
車両の右側・左側に関係なく全てが右ネジになっています。左側を締める際には間違わないようにしましょう。
【確実な点検と正確な作業】
当たり前のことですが、しっかりと点検すれば100%とは言いませんが、限りなく脱落事故の件数を減らす事が出来ると思います。
タイヤ交換を行う作業者・ドライバー・事業者がしっかりと決められた点検を行えば、防げる事故はあると思います。
・作業者
作業者は、ただ単にタイヤを付け替えているだけでは、ダメです。しっかしとタイヤを外したら点検をしないとダメな箇所があります。
1.ボルト・ナット
タイヤを締め付けているボルト・ナットに錆が発生していないか、スムーズに回転しているのかを点検する必要があります。
2.ホイールの当たり面
タイヤを取り外した際は、ホイールの当たり面を点検しましょう。
当たり面に錆があると均一にホイールがハブに当たらないのでしっかりと清掃してから取り付けましょう。
3.取り付ける際に給油
タイヤを取り付ける際に、ボルト・ナットにしっかりとエンジンオイル等を給油して取り付けましょう。
給油せずに取り付けると、錆が発生してスムーズに回転しなくなり、緩む原因になります。
4.トルクで締め付ける
インパクトレンチで締め付けた後に、トルクレンチにて確実に適正トルクで締め付けるようにしましょう。
ボルト・ナットは締め過ぎてもボルト・ナットの早期損傷に繋がりますので、きちんとしたトルクで締め付けるようにしましょう。
車種によって若干誤差があるとはおもいますので、しっかりとその車の適正トルクを調べたうえで締め付けるようにしましょう。
・ドライバー
車は運行する前に、簡単な点検するのが義務付けられていますが、全てのドライバーが行っているとは限りません。
オイルの量・ヘッドライトなどの点灯状態・タイヤの空気圧、その中でホイールの取り付けボルト・ナットの点検項目もあります。
点検ハンマーがあれば叩いてみて、なければ目視で点検してください。最近では緩んでいるのか一目で分かるインジケーターもあります。
特に左後輪の脱落が多いので重点的に点検して下さい。
・事業者
車の運行を管理している事業者は、しっかりと毎日点検しているのかをドライバーに確認し、管理しましょう。
タイヤを脱着してから100kmぐらい走行している車両は一度増し締めを実行してください。初期なじみの為にトルクが落ちている事がありますので。
1カ月点検・3カ月点検の実施をしっかりと行う。
【まとめ】
毎年毎年、数十件のタイヤの脱落事故が発生し、その内数件は重大事故に繋がっています。
特にトラック・バスの場合は、乗用車とは違って高速道路を走行する頻度が多いです。時速80キロ以上で走行している状態でタイヤが脱落すれば、どうなるのか分かりますよね。
タイヤ交換の作業者・ドライバー・事業者のどれか一つでも怠ると脱落事故に繋がる恐れがあります。そうならない為には、確実で正確な作業・決められた点検をしっかしと実施することが、脱落事故を防ぐことが出来ると思います。
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