最初にお伝えしますが、タイトルの〇〇ハンマーが発生したという事は、車のエンジンにとって極めて重大な損傷が発生している状態になります
この現象が発生してしまったエンジンはASSY交換かオーバーホールをするしかありませんので、かなりの高額修理になります
それだけ、重大なトラブルがおこっています
このウォーターハンマー・オイルハンマーとは何か?何が原因か?を下記より解説していきたいと思いますが、簡単にこの記事を書いている者を紹介します
私は、約20年車の整備に携わっている現役の整備士になります。現在は、特にトラック・バスを中心とした大型車の整備をしている者になります。整備士に関するブログを中心に発信していますので、興味があれば他の記事も参考にして下さいね
では、解説していきます
【車の動力の原理】
タイトルにもある、〇〇ハンマーとは一体何か?を説明する前に、少し車の動力の原理を解説します
これが、理解出来てないと〇〇ハンマーを説明しても分からないと思いますので
ガソリン車、ディーゼル車、天然ガス車の全ての車に共通している、エンジンの動力の仕組みです。
- キーを回す・プッシュボタンを押す
- スターターが回る
- フライホイールが回る
- クランクシャフトが回る
- コンロッドが動く
- ピストンが上下運動を行う
- 圧縮が発生する
- 燃料が噴霧されて爆発する
これがエンジンの動力の仕組みです。圧縮された空気に燃料(ガソリン、ディーゼル、ガス等)が噴霧される事によって、燃料が爆発して動力を得ています
これが、エンジンの簡単な一連の流れになります
【〇〇ハンマーとは?】
上記の説明で、簡単なエンジンの動力の仕組みが理解出来たと思います
では、〇〇ハンマーとは何か?
それは、ピストンが上下運動をする際に空気を圧縮していると説明しましたが、もしオイルやウォーターだったらどうなるでしょうか?
空気は気体なので圧縮する事が可能ですが、オイルやウォーターといった液体ならどうでしょう?
液体を圧縮する事は出来ません
では、圧縮されそうになった液体はどこに逃げるのでしょうか?
答えは、コンロッドに逃げます
本来圧縮出来ない液体をピストンの上下運動によって圧縮しようとしている途中で燃焼室の容量を超えた瞬間にピストンが上にいかなくなるので、無理やりクランクシャフトが回そうとして、コンロッドが曲がってしまいます
これが、LLC(エンジンの冷却水)ならウォーターハンマーと言い、エンジンオイルならオイルハンマーと言います
【原因とは?】
ウォーターハンマー・オイルハンマーでそれぞれ原因が異なってきます
:ウォーターハンマー
ウォーターハンマーの原因は、燃焼室内にLLCが入る事ですが、本来燃焼室にはオイルは少量含まれることはありますが、LLCは少量も入る事はありません
では、どこからLLCが入るのか?
①ノズルチューブ
これは、インジェクターが入る所です
ノズルチューブの周りにはLLCが循環されていて、高温になるインジェクターを冷やしています
ノズルチューブのOリングが劣化する事によって、LLCが漏れ出してきます
②シリンダーヘッド
シリンダーヘッドやガスケットに亀裂・損傷が発生すると、燃焼室内へLLCが入ってしまいます
③水没
人為的ミス以外の原因ではこれが一番多い原因になるかと思います
最近では、集中豪雨によって道路が冠水している映像をよく目にする機会が増えたと思います
その中で、車が冠水した箇所に車が浮かんでいる映像を見たことがありますよね
あれはおそらくウォーターハンマーをおこしてしまっている状態になると思います
インテークより多量の水を吸ってしまって、燃料室内へ水が入った事によってエンジンが止まった状態です
冠水した箇所へは絶対に車で入ってはダメです
④まとめ
人為的ミスによっても発生する事はたまにありますので、エンジンをオーバーホールした際は、整備する時には注意して組み上げていきましょう
ウォーターハンマーの原因の①②は共に、ウォーターハンマーになる前に、「LLCが減る」や「吹き返し」といった現象が先に発生すると思います
エンジンを長い期間、始動しなかった場合等に発生する現象だと思います
③は気を付けていれば発生する事は無い原因だと思います
:オイルハンマー
オイルハンマーの原因は、正常でも少量のオイルが燃焼室内へ入りますが、多量のオイルが混入してしまった場合におこります
①ターボチャージャー
私の会社でも2~3年に一度くらいは発生します
乗用車と違ってトラック・バスはそのほとんどの車にターボチャージャーが搭載されています
空気を過給する事によって、燃料室へたくさんの空気を送り込むことによって大きな爆発を得ています
そのターボチャージャーにはベアリングを潤滑される為に、エンジンオイルを使用しています
経年劣化やベアリングの損傷によって、何らかの原因でベアリング部よりオイルが吸気側に入ってしまい多量のオイルがインテークに送られて、燃焼室内へ送られます
多量のオイルが燃えた瞬間に白煙がマフラーより排出されます
白煙が排出されるだけなら良いのですが、そこから更にオイルの量が増えるとオイルハンマーをおこし、エンジンより異音(タンタン音)が発生したり、エンジンが停止したり、最悪の場合シリンダーブロック突き破って外にピストンが飛び出てきます
ウォーターハンマーと違って、これは走行中に発生する事が多いのでほとんどの場合、エンジンがアウトの状態になってしまいます
②インジェクター
インジェクターより多量の燃料が噴霧される事によっておこります
これも、白煙の排出と共にエンジンオイルの量が増えるので日常点検・運行前点検をきちんと行っている人は気づくと思います
③反転
事故等によって、エンジンが反転してしまった場合に起こります
本来、エンジンオイルは下に溜まっていますが、反転した事によってシリンダーヘッドに多量のオイルが流れてしまいます
なので、事故等をおこして反転した場合はいきなりエンジンを始動するのは控えましょう
インジェクターやグロープラグを取り外して、燃焼室内にオイルが混入していないか確認してから始動しましょう
④まとめ
ウォーターハンマーと違って、オイルハンマーはターボチャージャーの不良以外は、点検を確実に行っていれば防げるものが多いです
常に、マフラーからの煙の排出を気にしながら運転していれば、気づけるものあると思います
【総合まとめ】
ウォーターハンマー・オイルハンマーの発生は、エンジン内部に重大なトラブルが発生した事になります
特に、路上故障で発生してしまった場合は確実にレッカー移動になると思います
トラブルを100%防ぐのは不可能ですが、少しでもトラブルを回避できるように運行前点検・日常点検を確実に行い、予防整備で部品(ターボチャージャーやインジェクター)の交換を実施するれば、発生確率を下げる事は可能です
もし発生してしまったら、上記でも説明した通り、最低でもエンジンオーバーホール、最悪でエンジンASSY交換が必要になります
車の整備士じゃなければ、この様な現象は知らないと思いますので、少しでも参考になればと思います