ハブベアリングとは、車のアクスルに付いていて、車のタイヤと同じ回転をしている部品になります。
タイヤがスムーズに回転しているのはこのベアリングのおかげです。
点検は車検時に行うのが基本ですが、車検以外でもハブを取り外した時はしっかりと点検を行いましょう。
この点検を怠るとベアリングが焼き付いてしまい、最悪路上で車が燃えてしまう可能性があります。よくニュースで高速道路上でトラックのタイヤから火が出て車が燃えた、というニュースを見ると思いますが、その原因の一つがこれになりますので、しっかりと点検しましょう。
簡単に私の経歴です。私はこれまで乗用車・トラック・バスの整備を15年以上やっている現役の整備士になります。整備やトラック・バスに関する情報を色々を発信しているブログになります。他にも色々な投稿をしていますので、気になった方は是非他ののブログも参考にしてもらえたらうれしいです。
では、ハブベアリングに関する、取り外し方法や組付け方法、を解説していきたいと思います。これを読んでもらえたら、ベアリングに関する様々な事を理解できると思います。
「取り外し」
【ハブの脱着】
まずは、ハブの脱着です。基本的にはタイヤが付いた状態で取り外します。下記のようなホイールドーリーがあれば楽取り外す事は可能ですが、無くてもコツをつかめば取り外す事は出来ます。
稀にピカピカのアルミホイールが取りついている車両等は傷を付けないために、先にタイヤだけを取り外す事はあります。
- アクスルの真ん中のキャップを取り外す(フロント側) リヤシャフトを取り外す(リヤ側)
- ロックボルトを取り外す・割ピンを取り外す
- ロックプレートを取り外す
- ハブナットを緩める
- スペーサーを取り外す(無い車も有り)
- アウターベアリングを取り外す
- ハブ(タイヤ付き)を取り外す
上記が一連の流れになります。慣れればすぐに終わる作業になります。
【ベアリングの点検】
アウターベアリング・インナーベアリングに付いている古いグリスを全て取り除くために、洗浄機の中へ入れます。
インナーベアリングはメーカーによって違っていて、アクスル側に残るタイプとハブと一緒に付いてくるタイプがあります。
洗浄機が無ければしっかりと古いグリスを拭き取り、エアガン等でベアリングの中に入っている古いグリスを外に飛ばしましょう。
完全にグリスが無くなったら、ベアリングを手で持って回転させてスムーズに回るのかを確認しましょう。
この時、スムーズに回らなかったり、ベアリングのコロに傷がついていたり、焼けていれば交換が必要になります。
焼け具合の判断は正直難しいと思います。人によってもその判断は違ってくると思いますが、一例として、虹のようになっているば完全にアウトですが、少し焼けている程度なら大丈夫だと思いますが。新人の整備士では判断は難しいと思いますので、先輩整備士に確認して判断してもらって下さい。
私は、怪しい物は全て交換しますが、同じ職場の整備士でも交換しない人は結構いると感じます。何かあってからでは遅いので怪しい物は交換する事をお勧めしますね。
【ハブグリスの交換】
ハブの中に入っている古いグリスを全て取り除いて、新しいグリスに交換します。
この時、一緒にハブシールの交換も行います。
グリスがドロドロの場合は、洗浄スプレー等でしっかりとハブの内部まで拭き取らないとグリスがしっかりとハブの内部に留まらず、落ちてしまうので注意しましょう。
ハブのグリスは出来る限りしっかりと盛るようにしましょう。インナーベアリング・ハブ・アウターベアリングの全てにグリスが充填されるようにしっかりと入れましょう。
上記のような工具があれは確実にグリスを注入する事が出来ますが、手でもグリスは注入する事は出来ますので、資金に余裕があれは購入するのも良いとは思います
昔は軽く盛るぐらいでしたが、ベアリングが焼ける事故が多発したので、しっかりと盛るようになりました。
グリスが充填出来たらハブシールを組み付けて完了です。
ハブのシールを取り付けるときは、普通のハンマーでも入れる事が出来ますが、柄が短いハンマーがあると入れやすいです。
「組付け」
ベアリングの点検・ハブグリスの充填が終われば組付け作業の開始です。
- ハブをアクスルに組み付ける
- アウターベアリングを組み付ける
- スペーサーを入れる(無い車も有り)
- ナットを締め付ける
- プレロードを調整する
- ロックプレートと付ける
- ボルト・割ピンと付ける
- キャップ・リヤシャフトを取り付ける
上記の順序で行います。
新人整備士が特に多くする作業になると思います。
この作業で気を付けないとダメなのが、2・5番になります。その2つだけ詳しく解説していきます。
【ハブ組み付け時の注意点】
全ての作業において注意しながら行わないとダメですが、特に2・5番は気を付けて作業を行わないと修理しているのに逆に壊してしまう可能性があるからです。
『ベアリング組付け』
上記の2番の項目の「アウターベアリングを組み付ける」作業において、注意しないとダメな事がいくつかあります。
まず、アクスルにアウターベアリングを入れて組付ける際に、手でそのまま奥まで入ったのなら大丈夫ですが、そうでない場合はハンマーを使用して奥に入れていきます。
その時に、ベアリングの叩く位置を間違わないようにして下さい。下記の写真の↑の箇所を叩いてください。他の箇所を叩くとベアリングが破損してしまいます。
そして、叩いて入れる時にアクスルのネジに工具が当たらないように注意しましょう。仮にネジ山が潰れてしまったらロックナットがかからなくなってしまいます。
最後に、これは私も新人の頃は先輩に教えられたのでこのやり方でやっていましたが、今はこのやり方ではやっていません。
ベアリングを叩いて入れていくことは良いのですが、最後まで入れない事です。昔は最後の奥までベアリングを叩きこんでいましたが、それをするとベアリングにダメージを与える事になります。なので、専用工具あれば良いのですが、なければ3分の2ぐらいまで入れてからロックナットで締めていって奥まで入れるようにしましょう。
昔からやっている人や、あまり構造を理解していない人は最後まで思いっきり叩き込んでベアリングを入れていると思いますが、止めましょう。ベアリングを壊しているようなものなので。
『プレロードの調整』
プレロードとは:そのクルマに合った適正な与圧(締付トルク)をかける事です。この作業を怠るとベアリングの破損・損傷に繋がる恐れがあります。
プレロードのやり方、メーカー・車種によって違いあるので、今整備士をしている車にあったやり方で行ってください。参考までに→日野自動車の大型車のフロントハブの調整方法です。
この作業を行う為には専用のトルクレンチやバネ測りが必要になります。
「まとめ」
トラックにおいて、ベアリングは非常に重要な部品となっています。
このベアリングの点検を怠ると重大事故が発生する恐れがあります。特に、高速道路上で起これば大惨事に発展します。
作業は大半は若手整備士(5年未満)が行う事が多いと思いますので、それを教える・点検する先輩はしっかりと後輩に注意点・気を付けるべきポイント等を伝えましょう。
簡単な作業だからこそ、しっかりと丁寧に作業を行わないとダメだと思います。
整備士がしっかりと作業をして、重大事故が1台でも少なくなるように点検していきましょう。
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